第7章 聖戦
第167話 ヴァレンタインの夜
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た都……と言う気になる言葉もあった。
……つまり、彼女の立場はそれまであった国が滅んだ直後に建てられた国の傀儡の王。
その挙句に更なる戦争。実権はない王だから、嫌だろうと、何であろうとその戦争とやらに反対出来る立場にはなく、しかし、王であるが故に、その戦争の責任はすべてタバサに負わされた。
そう言う事か。
それに……。
それに、先ほどの言葉の中で取り分け強い陰の気を発した部分。周りから国には王が必要だと言われた。そう彼女が口にした時に、心なしか……然して根拠がある訳ではないのだが、其れまでの部分よりも強い悔恨の情が発せられたように思う。
これはつまり、自らの意志。自ら決意して王位に就いた訳ではなく、流された結果、王位に就いた事に対する悔い。更に言うと、彼女に対して強い加護を与えているのがヘカテーである以上、そうやって説得したのは男性……その当時の彼女の性別がはっきりしないので確実にそうだ、と言い切る事は出来ないが、それでも男性である可能性が高いと思う。
こりゃ、考え得る限り、最悪の状況だな。
「過去を完全に消す事は出来ない」
出来る事は覚えて置く事だけ。そして、その事が間違いだったと思うのなら、同じ間違いを繰り返さない事。
タバサの語る状況では、今の俺に慰める言葉はない。それに、おそらくなのだが、この彼女が語る内容は、今の彼女の人格を作り上げる上で重要なファクターと成っている可能性も高い。
高い能力を持つ者に対する義務。その事に対して彼女が強いこだわりを持つ理由は……。
小さく、しかし、彼女にしては、はっきりと首肯いた事が分かる仕草で首を縦に振るタバサ。但し、この言葉は彼女に対して力を与える言葉であると同時に、俺自身を縛る言葉となる可能性の高い言葉でもある。
聖戦後の自らの身の振り方に関して、力を持つ者に対する責任と義務と言う問題が大きく立ちはだかる事となる。更に言うと、改革の道半ば、と言う状況でガリアを放り出す事が出来るのか、と言う自身に対する疑問も強くなって行くから。
ジョゼフとの約束は果たしたし、折角、拾った命。これから先は俺の自由に使わせてくれ、とばかりに尻に帆かけて逃げ出す訳にも行かなくなる……可能性が高くなるのだが。
何故か外堀から徐々に埋められて行く様を大阪城の天守から見つめる秀頼の気分が、今ならば良く分かるような気もするのだが……。
まさかこうなる事を予測してあの蒼髪の親父が俺を巻き込んだ、などと言う事はないと思うのだが。
すべての会話が終わった。後に残るのは、俺と彼女。そして、二人が座っている豪華な寝台。
手を伸ばせば簡単に触れられる距離にある彼女の……身体。
元々、吸血姫と言う存在は、ある程度の淫靡な印象が付き纏うモノであり……。
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