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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十四話 イゼルローンにて(その4)
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なっただろう。俺はオフレッサーに感謝すべきなのか?

「心無いことを言いました、お許しください」
リューネブルクが頭を下げた。そしてオフレッサーは溜息を吐いて首を横に振った。
「いや、卿の心遣いには感謝する。だが俺はこういう生き方しかできんのだ……」

リューネブルクは少しの間俯いて黙っていた。
「……装甲擲弾兵はイゼルローン要塞に侵入した反乱軍を撃退しました。そしてローゼンリッターの隊長を斃したのです。我々は十分にその役目を果たしました。誰もそれを非難することは出来無いでしょう」

リューネブルクの言葉にオフレッサーが苦笑した。リューネブルクも苦笑している。そして苦笑を収めると二人は前を見た。ヴァレンシュタインの姿が小さくなっている。

「ミューゼル准将、リューネブルク准将」
「はっ」
オフレッサーが俺達の名を呼んだ。先程までの沈んだ口調ではない、太く力強い声だ。

「今回、敵を撃退出来たのは卿らの進言によるところが大きかった。ミュッケンベルガー元帥にも伝えておく。元帥閣下も喜んで下さるだろう」
「はっ」

オフレッサーが俺達を気遣ってくれているのが分かった。ヴァレンシュタインを逃がしたこと、敵の撤退を許したことは自分の判断だと言うのだろう。そして敵の作戦を見破ったことは俺達の功績だと報告するに違いない。

妙な男だ、一兵士としては無敵だろうが、陸戦隊の指揮官としては二流だろう。おまけに不器用で融通が利かない、どう見ても立ちまわりが上手いとは言えない。

しかし悪い男ではないようにも見える。少なくとも俺とリューネブルクの意見を受け入れて伏撃を成功させた。そして卑怯な男ではない。俺は間違いなくこの男に救われたのだ。一体この男をどう評価すればよいのか……。

「ミューゼル准将」
「はっ」
「卿はヴァレンシュタインと因縁が有るようだな」
オフレッサーが問いかけてきた。どう答えれば良いのか迷ったがリューネブルクも知っている事だ、正直に答えるべきだろうと思った。

「ヴァンフリートの戦いで小官の副官が戦死しました。ジークフリート・キルヒアイス大尉、小官にとっては信頼できる部下であり同時にかけがえのない親友でもありました」
「……そうか」

そのままオフレッサーはしばらくの間俺を見ていた。居心地が悪かったがオフレッサーからは悪意は感じられない。ただじっと俺を見ている。向こうは上級大将、こちらは准将、耐えるべきだろう。

「卿、ヴァレンシュタインに勝てるか?」
オフレッサーが低い声で問いかけてきた。
「それは……」

分からなかった。ヴァンフリートでは負けた、今回は相手の作戦を俺が見破った。次はどうなるか……。分かっているのは厄介な相手だという事だ。油断はできない……。

「分からんか」

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