第四百二十九話
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第四百二十九話 酪を食べて
亜美が作った酪はバターだった、セテニティとアルテミスはそのバターを見ながら亜美に提案した。その提案はというと。
「パンに付けて食べるべきでは」
「そのまま食べるよりもいいと思います」
「バターをそのまま食べるよりも」
「パンと一緒に食べるべきかと」
「そやな」
亜美も二匹の言葉に頷いた。
「その方がええな」
「はい、そのまま食べますと」
どうにもとだ、セレニティは主に述べた。
「バターは無理があります」
「それは身体にもよくないかと」
アルテミスはこう述べた。
「バターをそのまま召し上がられて」
「ほなそうするわ、けれどな」
こんなことも言う亜美だった。
「昔の人はそのまま食べてたんやな」
「酪は酪で」
「そのままで」
「パンなんてなかったで」
昔の日本には、というのだ。
「明治までな」
「お米にバターとなりますと」
「あまり、ですね」
「バターライスがありますが」
「どうにもですね」
「そやからな」
どうしてもというのだ。
「酪はあまり食べへんかったやろな」
「蘇よりもですね」
「醍醐よりも」
そうした乳製品よりもというのだ、使い魔達も。
「お酒にも合うかどうか」
「それはわかりませんが」
「お酒なんてな」
それこそとだ、亜美はまた言った。
「うち飲めへんしな」
「はい、まだ未成年ですし」
「それは当然ですね」
「それはわからんわ」
酪、つまりバターが酒のつまみになるかはというのだ。
「うちには」
「どうしてもですね」
「そのことは」
「ああ、けれど他の乳製品と同じでな」
その蘇や醍醐と共にというのだ。
「お酒のつまみやったらしいで」
「バターもですか」
「そうなってましたか」
「そうみたいやで」
そうした話をしつつだった、亜美はパンを出して酪をその上に塗って食べはじめた。それは実に美味いものだった。
第四百二十九話 完
2017・3・16
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