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アマルガムに接収され、発電電力の大きさからも「ウィスパードが出現しなかった正常世界への帰還」を目指して空間へのアクセスが行われる装置が、この島にも用意され、カナメがその中心となるように準備調整されていた。
いつもならレナード・テスタロッサでも来て、気取った顔で何かご高説を垂れるか、何か嘲笑うような顔でもしながらマザコン野郎に笑われる時間だったが、今日は何故かカリーニン少佐が訪れ、カナメと話そうとしていた。
「やあ、カナメ君、気分はどうかね?」
「カリーニンさん、こんなとこまで連れ回されて、いい気分の訳ないじゃないですか? ここ、一体どこなんです? 北半球、西半球? ソースケは? テッサは?」
「順に説明しよう、ここは、あの懐かしのメリダ島だ」
「えっ?」
ソースケのアーバレストも壊され、テッサやマデューカスさんも行方不明。
トゥアーハー・デ・ダナンとか言う、一度自分がレディチャペルから操船した潜水艦も、どこにいるのか、生きているのかも分からなかった。
前回、自分を救出に来てくれたソースケやテッサを、ロシアの実験地で自分の体で射殺しようとしたのは記憶している。
だが重ね合わせの観測結果が違って、二人は生きている模様。
あの時間や空間がイカレてしまった原初の実験場所で、ウィスパード同士が会話したり接触すると、何かが壊れて時間が戻り、繰り返し、反響して、またやり直す。
そこからは何かに操られ、乗っ取られた体、それでもカリーニンさんは「君の意思で決めて欲しい」と言って、何かに乗っ取られた状態を嫌ってカナメの記憶と体を取り戻させてくれた。
「ソースケやデ・ダナンはここに向かっている、当然君を取り返し、我々の計画を邪魔するためにね」
「はあ」
そこで、どうしても確認したい話があり、それをカリーニンにぶつけて見た。この場所、この時間になら、何故か答えてくれそうな気もした。
「あの、どうしてみんなを裏切ったんですか? いつから、どうして?」
「ああ、私もそれを聞いて欲しくてここに来た。君は予言、ウィスパードが出現しなかったらどんな世界になっていたか、それを書き記した書類を見たことがあるかね?」
「いいえ」
「よく見給え」
カリーニンに手渡された資料には、年表に事実無根の情報を並べたような、冗談としか思えない物が並んでいた。
「え? 月着陸とか何ですか? ペレストロイカ、ベルリンの壁崩壊? ソヴィエト崩壊? ユーロ? ユーゴ、ルワンダ? 何の冗談です?」
「それこそが本来起こったとされている歴史だ。ブラックテクノロジーによる利益とドルを流し込まれ、アメリカの不安定化工作によって、ロシアと中国で共産国崩壊や内戦が起きているが、それが起こらなかった世界。核戦争による相互確証破壊も起こっていない世界。つまり「数千万人
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