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ULTRASEVEN AX 〜太正櫻と赤き血潮の戦士〜
3-3 ジンと大神
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ついに涙腺が崩壊したのである。
すばらしい。その一言だけで片付けるのももったいないくらいだ。
こんなにすばらしい舞台を見せる力が彼女たちにあるなんて。もっと彼女たちの舞台を見たいと思った。明日も、その次の日もずっと…
…ふと、大神にあるものが脳裏によぎる。
夜の見回りのときに見つけた新聞記事の一面。そこに記載されていた、八年前の降魔戦争で争いあっていたと聞いていた赤い巨人と、再来した人類の脅威『降魔』。

(…もし、あの降魔がここに現れたら……)



その翌日だった。



「帝劇を出る!?」
突然の大神の言葉を聞いて、ジンは声を上げた。
このとき、花組たちは稽古のために一足先に起床して稽古に励んでおり、二人だけで食堂で朝食をとっていた。そんなときに突如、大神はまだここに配属されてから1週間くらいの日数しか過ごしていないのに、ここを辞めると言い出してきたのだ。
「今すぐと言うわけではないが、近い内に支配人に辞表を出すつもりだ」
「あの見回りの日から、ここ二三日…様子がおかしいと思っていたけど…急すぎませんか?」
「そうだな…すまない。けど、俺はこれ以上、こんなところで暢気にモギリなんてやっている場合じゃないと思うんだ」
「そんなにモギリが、嫌なんですか?」
その通りだとしたら、マリアの場合愚かしいと罵っていただろう。
「いや、…そうじゃない。この帝都が平和ならむしろモギリでもなんでもやるさ。軍人が戦う必要がないということは、それだけ平和なことであり、俺たちが最も求めているものだ」
食事を終え、大神は箸を置いて申し訳なさそうに言った。
「だが、8年前の降魔戦争…その悲劇がまたこの帝都で繰り返されようとしている。俺はこの日本のためにも、国を守る軍人として立ち上がらないといけない。
この劇場で、花組のみんなが素敵な舞台ができるようにするためにも」
「大神さん…」
決してモギリや雑用を、軍人であることを言い訳にくだらないプライドを出して嫌がっていたわけではない。彼なりにこの帝劇と、そこにいる皆のことを考えた上で結論を出していたのだ。昨日の椿姫の夕が、逆に大神に「彼女たちが平和な帝都で素敵な舞台を続けられるようにする」ために帝劇を出る決意を固めさせていたのだ。
「でも、当てはあるんですか?」
「正直、ないよ。だが少しでも、この国を守るためにできることを探し、力になりたいんだ。だからまず、士官学校の伝をたどってみるよ
それに…米田支配人のこともある」
「米田さんのこと?」
何か思うところがあるというのだろうか。ジンは米田に対しては、記憶を失い身寄りのない自分を拾ってくれた恩もあるし、自分が持っている赤い巨人の力についてもわかってくれた上でここにおいてくれた人だ。そんな人に、大神がどんな不満を抱いているとい
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