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ULTRASEVEN AX 〜太正櫻と赤き血潮の戦士〜
3-3 ジンと大神
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まだショックから立ち直りきれていなかった。

その夜、大神はさくらから、米田からの命令で夜の見回りを伝えられ、二人で夜中の暗い帝劇を歩き回っていた。
「大神さん、まだ元気がないですね。大丈夫ですか?」
「ありがとう、さくら君。俺は…平気だから」
あまりそうには見えない。初対面で見た時の凛々しさがなかった。
少し歩いてると、テラスの前で外を眺める人物が目に入る。
「誰だ?」
消灯時間が近い時間なのに、誰かが歩き回っているのだろうか。もしかしたら、どこからか侵入者が出たのだろうか。少し警戒しつつ近づくと、そこに立っていたのは見覚えのある男だった。
「あれ…大神さんに、さくら?」
「その声、ジンさん?」
少し暗くなっていたせいもあってすぐにわからなかったが、さくらは声で、ガラス窓の前に立っているのがジンだとわかった。
「こんな時間に、いったい何をしてるんだい?」
「外を見てたんですよ」
大神がそれを尋ねると、ジンは外のほうを指差して答えた。二人もジンの指差した方角の景色を眺める。さくらはそれを見て、わぁ…と声を漏らした。
外に広がる銀座の夜景が目に入った。数多の数街頭の光が夜の銀座の街を照らしている。それはあたかも夜空の星のようにも見えた。
「綺麗…あたし、この景色大好きなんですよ。美しく見せるためじゃなく、あくまで町を照らすためだけの光なのに、一つ一つの光が一緒になってこんなにも綺麗に輝いてるんですよ。あたしも、舞台の上ではこの光の灯のような、強くて暖かい光でありたいって思ってるんです」
「そっか、さくらもこの光が気に入ってるのか」
自分以外にも、この銀座の夜の灯を気に入っている人がいることに、ジンは微笑を浮かべる。
「僕の場合、この景色を見てると…懐かしい気持ちがこみ上げてくるんだ。こんな星の光に包まれたような…そんな場所を、昔どこかで通ったことがあるような気がする。
だから、屋根裏部屋の一部を敢えて僕の私室にしてるんだ。すぐに夜空の星を見ていられるように」
「ジンさん…」
さくらは、以前にジンには過去の記憶がないことを聞いていた。過去がない、亡くなっているとはいえ敬愛する父である一馬を持っていた自分には考えられないことだ。もし自分に過去の記憶がなかったら、父を慕い、こうして帝都に上京して父の意思を継ぐなど考えられなかったに違いない。それだけに、ジンの過去の記憶がないことを不憫に思った。
一方で、大神はその美しい夜景を見ても、晴れやかな顔を浮かべられなかった。ジンはそれを見て、なんとなく大神が何を考えているのか察した。
「あ…ところで、二人は夜の見回りでしたよね?そろそろ行かれた方がいいと思うんですけど…」
「あ…そうでした。すみません大神さん。お時間とらせちゃって」
「いいさ、それよりジン、君も夜は遅いし、
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