第一章 天下統一編
第十六話 決裂
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の掲示したことは秀吉なら叶えてくれると思う。史実では北条氏規が激しく抵抗したにも関わらず結局潰すことは無く、万石級の知行でないが畿内に知行を与えた。この秀吉の処置は北条氏規を厚く遇した方だと思う。北条氏照の居城である八王子城攻めとは雲泥の差だ。八王子城に籠もる者は女子供関係なしに根絶やしにされた。北条氏規を降伏させた徳川家康が北条氏規を擁護したことも大きいのかもしれないが、秀吉自身も北条氏規のことを嫌っていなかっただろうと思う。
「頼みをお聞き届けいただけず残念です。相模守殿、私は降伏する意思はない」
北条氏規は俺にきっぱり降伏しないと宣言した。
想定通りの返答だな。
気が引けるが織田信雄からの言葉を伝える必要がある。
「韮山城攻めの総大将、織田内大臣、からの伝言がございます。その伝言を聞かれた上で今一度よく考えた上で返答いただけますか?」
俺は真剣な表情で北条氏規に言った。北条氏規が降伏を拒否した後に総大将からの伝言を伝える。聞かずとも良くない内容であることは誰にでも分かる。
「どのような内容でしょうか?」
「『降伏を拒否すれば城を総攻めにして城に籠もる奴らを血祭りにしてやる。女子供だろうと容赦せん』と総大将は申しております」
北条氏規は恫喝と取れる降伏勧告を聞き終わると眉間に皺を寄せていた。北条家臣達にいたっては憤怒の形相で身体を小刻みに震わせていた。
俺は生きて帰ることができないかもしれない。織田信雄は馬鹿だ。こんなことを伝えれば相手の気持ちを硬化させるに決まっている。
「相模守殿、何故そのことを今話されたのですか?」
これを最初に言えば俺は間違いなく血祭りにされ大手門に打ち捨てられていたかもしれない。それほど刺激的な内容だ。だが、こんな下品極まりない降伏勧告を敵とはいえ伝える気分になれなかった。
俺は素直に自分の気持ちを北条氏規に伝えることにした。
「戦で勝敗を決するならいざしらず。敵とはいえ恫喝し、相手の矜持を踏みにじるような品性下劣な言葉を伝えることはできませんでした。ですが、美濃守殿が降伏を拒否されたのなら、総大将の言葉をお伝えする他ございません」
俺は人の悪意の籠もった視線を一身に集める中で動じることなく北条氏規に自分の気持ちを伝えた。北条氏規は俺の話す姿を黙って見ていた。
「青いですな」
北条氏規は穏やかな目で俺を見ていた。
「青かろうと、これは私の矜持です。矜持を曲げては私ではありません」
「武家に生まれた以上、時に自分の矜持を曲げねばならない時がきっとくるでしょう。ですが、その矜持を忘れず大切になされよ」
北条氏規は俺を諭すように言った。北条家臣達は北条氏規が話を終えると、俺に「さっさと帰ろ!」と怒鳴りだした。それを北条
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