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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十三話 イゼルローンにて(その3)
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いう事だ。
「全く、これで借りが一つだ」
オフレッサーが面白くなさそうに呟いた。その様に思わずリューネブルクと顔を見合わせた。彼も何処か可笑しそうな表情を堪えている。
妙な男だ、ただの人殺しかと思ったが妙に憎めないところが有る。それがあるから部下からも慕われているのだろう。但し陸戦隊の指揮官としては二流だろう、リューネブルクには及ばない。
撃たれた兵、ヴァレンシュタインの傍に兵士が寄り添っている。ヴァレンシュタインは動いている。どうやら生きているようだ、怪我の度合いは此処からでは分からない……。しかし本当にヴァレンシュタインなのか?
帝国軍の兵士が両手を上げながらゆっくりと近づく。敵意は無いと理解したのだろう。ヴァレンシュタインとキスリングを帝国軍の兵士が抱えて歩き始めた。どうやら撃たれたのは肩のようだ。
兵士達がヴァレンシュタイン達を運んで来た。ヴァレンシュタインとキスリングをゆっくりと床に下ろす。ヘルメット越しに顔を見た。間違いない、ヴァレンシュタインだ。一度このイゼルローンで見たことが有る、写真は何度も見た。夢でも見たのだ。この男を殺す夢だった。
他の二人、一人は女だったが直ぐヴァレンシュタインの両脇に付いた。こちらに対する警戒心を隠さない。落ち着いているのはヴァレンシュタインだけだ。
「オフレッサーだ。先ず撃った事を詫びる、済まん。俺の命令が徹底しなかった」
オフレッサーの言葉にヴァレンシュタインは微かに笑みを浮かべた。
「エーリッヒ・ヴァレンシュタインです。ギュンター・キスリング少佐をお返しします」
「確かに、受け取った」
オフレッサーが重々しく頷いた。
「何故此処に来た? 無事に帰れると思ったのか」
その言葉に両脇の二人が表情を強張らせた。
「彼は私の士官学校時代の同期生です。そして親友でもある」
「命を捨てる価値が有ると」
オフレッサーの言葉にヴァレンシュタインが微かに笑みを浮かべた。親友、その言葉にキルヒアイスを思い出した。キルヒアイスは俺のために命を落とした。今ヴァレンシュタインはキスリングのために命を捨てようとしている。親友、
たった二文字だ、だがその文字の重さは何物にも比較できない……。
オフレッサーが鼻を鳴らした。下品な男だ、この男には親友などいないだろう。
「キスリングを守ってください。彼の怪我は同盟軍が負わせたものではない」
その言葉にオフレッサーが厳しい表情を見せた。リューネブルクも同様だ。
「どういう事だ」
「傷を負わせたのは帝国軍の兵士です、彼は有る秘密を知っている。それが理由で憲兵隊から追われ、殺されかかった。彼を助けてほしい、それが出来ないなら同盟に連れて帰ります」
オフレッサーが吼えるような声で笑った。
「連れて帰るか、面
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