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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十三話 イゼルローンにて(その3)
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多少は話そうとするだろう、時間を稼ぐことになる……。どうして、どうしてこうなる……。

「時間が有りません、これ以上ぐずぐずしていると帝国軍が怪しみます。私の指示に従ってください」
「しかし」
「救出作戦の指揮官は私です、私の指示に従いなさい」

皆が沈黙した。ヴァレンシュタイン大佐は正しいのかもしれない、しかし誰も納得していない。この遣る瀬無さは何なのか……。

「私は大佐についていきます」
「ミハマ大尉!」
驚いたような声をヴァレンシュタイン大佐が出した。

「時間が有りません。ぐずぐずしていると帝国軍が怪しみます。さあ行きましょう」
そうだ、止められないのなら付いていくしかない。

「小官も同行させていただく。大佐だけを死なせることは出来ません。同盟にも人はいる、亡命者だけに犠牲を払わせる事は出来ませんからな」
結局俺にはこれしかできない……。


帝国暦 485年 10月20日  イゼルローン要塞 ラインハルト・フォン・ミューゼル


「撃つな! 今負傷者を運ぶ! 撃つなよ!」
大声と共にゆっくりと人が出てきた。一人ではない、三人だ。三人が一人を支えている。支えられているのが負傷者か……。確かキスリング少佐と言っていた。

三人のうち一人は中肉中背だが後の二人は小柄だ。反乱軍には女性兵が居る、或いは女性兵かもしれない。女なら殺されるようなことは無い、惨いことはされないと考えたか……。

エーリッヒ・ヴァレンシュタイン、奴が反乱軍の陸戦隊にいる。戻ってきた捕虜がそう言っていた。敵の陸戦隊はローゼンリッターだ。併せて捕殺すればこれ以上の武勲は無いだろう。ヴァンフリートでの借りも返せる。

だが敵もしぶとい。負傷者の返還はおそらくは撤退の時間稼ぎだろう。だが拒絶は出来ない、そんなことをすれば兵の士気にかかわる。大丈夫だ、こっちが圧倒的に優位なのだ、逃がしはしない。

いきなり銃声が聞こえると小柄な兵士が後ろに倒れた! 馬鹿な、誰が撃った? 相手は女だぞ。
「誰が撃った! 撃つなと言ったはずだぞ!」
オフレッサーが怒声を上げた。二メートルの巨体が吼えるとさすがに迫力が有る。

「あれはヴァレンシュタインだ! ヴァンフリートの虐殺者だ!俺は仇を取っただけだ!」
あの小柄な兵がヴァレンシュタイン? 叫んでいる男を見た。さっき戻ってきた男だ、オフレッサーほどではないが体格の良い男が叫んでいる。その男をオフレッサーが大股に近付くとものも言わずに殴り倒した。

「この恥知らずが! 誰かあの男達を連れてこい、武器は置いていけ、両手を上げてゆっくりと近づくんだ、早く行け! 丁重にだぞ、乱暴にするな」
滅茶苦茶な命令だったが言いたい事は分かる。相手に敬意を払えという事だろう。それと早く連れてこいと
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