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新説煙草と悪魔
第七章

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「そうしてるさかいな」
「煙草はええ気分転換ってな」
「そう言うて吸って」
「ほんまに気分よお書いてる」
「それがどうもな」
「わし等の狙いと違って」
「ええ気分やないわ」
 本当にとだ、彼等はすっかり身に着いた大阪の言葉で話していった。
「折角煙草で不健康になってもらおと思ってるのに」
「身体には悪くても気分がよくなるんやったらな」
「それでは不十分や」
「っちゅうか気分よおなってどうするねん」
「もっと中毒みたいに吸うてくれ」
「さもないと困るわ」
「けど」
「ああ、けどやな」
 悪魔達はここでだ、ふと笑顔になって言った。
「何かええな」
「そやな、人間が煙草吸うてそれを楽しむの見るのって」
「何か不思議にな」
「悪い気持ちせえへんわ」
 こう二人で話した。
「何でか知らんけど」
「煙草買ってくれて人間がそういう顔を見るのもな」
「悪くないわ」
「それもまたな」
「さっきの作家さんもやし」
「織田さんやったな」
 作家の名前も言うのだった。
「肺が悪いみたいやけど」
「生きてる限り書いて欲しいな」
「煙草吸うてそして」
「頑張って書いて欲しいわ」
「まあ身体には悪いけど」
「吸いながら身体を悪くしつつや」
 悪魔なのでこの狙いは忘れない、だがそれでもだった。
「どんどん吸うてくれ」
「そして気分転換しながらな」
「気持ちよく書いて欲しいな」
「戦争やらのご時勢でも」
 世相はそうした中にあった、何処を見ても戦争の話だ。悪魔はこちらにも関わっているが彼等はそうした悪魔ではない。だからだ。
 戦争についてはこれで話を止めてだ、二人で言うのだった。
「煙草吸うてくれ」
「身体は悪くしても気分転換もしてや」
「それで気持ちよくやってや」
「こっちもそんな気分になってきたからな」
 だからと言ってだ、彼等もだ。
 自分達で煙草を吸う、この時代の煙草である巻き煙草をだ。マッチで火を点けてそうして吸ってからだった。
 二人でだ、満足して言った。
「美味いわ」
「ほんまにな」
 二人で笑顔になった、その煙草は確かに美味かった。悪魔である彼等にしてみても。


新説煙草と悪魔   完


                       2017・1・20
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