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新説煙草と悪魔
第五章

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「明らかに喜んでおるのう」
「気が晴れ晴れとした感じで」
「不健康になるどころか」
「そうなっておる」
「気が元気になるとは」
「わし等の狙いとは違うぞ」
 このことについて思うのだった。
「どういうことじゃ」
「これでよいのか」
「何か違わないか」
「そうじゃのう」
 こう二人で話す、二人共自分達の狙いとは違ってきているのではないかと思うのだった。そして城の話を聞くとだ。
「奥方様は相当勘気の強い方らしいのう」
「すぐに怒られしかも怒られると手がつけられぬらしい」
「何とも困った方だという」
「しかし煙草を吸うと落ち着かれる」
「それもいつもな」
「そうした方だからか」
「煙草が救い主となっておるのじゃな」
 こう二人で話すのだった、新鮮な魚の刺身を食べながらだ。酒も飲んでいるがこちらも随分と気持ちよく飲んでいる。
「勘気を消す為の」
「それか」
「怒られていても」
「それが違うとは」
「随分じゃな」
「しかもじゃ」
「うむ、奥方様だけではない」
 煙草で勘気等を消している者達はというのだ。
「他の者達もな」
「うむ、煙草を吸って楽しんでおるな」
「勘気を消して気分転換をして」
「そうしてじゃな」
「心をよくしておるか」
「そういえば欧州でもそうらしいしのう」
 彼等がいたこの国々もというのだ。
「煙草を吸って気分転換をしておるらしいし」
「それなら一緒ではないか」
「全くじゃ」
「これでよいのか」
「煙草を広めて」
「これだけ身体に悪いものはないというのに」
 だからこそだ、彼等は煙草をこの国にも広めているのだ。しかしその彼等の思惑とは違ってだ。人々はというと。
 煙草を吸って気分転換をしている、そうしてだった。 
 煙草は瞬く間に天下に広まり誰もが楽しく飲んだ。悪魔達は城の奥方の話だけでなく天下の話を聞いて大きく落胆した。
 そしてだ、彼等の間でまた話をした。
「こんな筈ではなかった」
「全くじゃ」
「どうしてこうなる」
「病は気からじゃ」
「気をよくしてもらっては本末転倒じゃ」
「吸うと癖になってひたすら吸って不健康になってもらいたいのじゃ」
「もう離れられぬとな」
「中毒になって欲しかったというのに」
 これが彼等の思惑だったのだ、煙草を楽しむのではなくそれに憑かれて欲しかったのだ。だが彼等はというと。
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