第三章
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そしてだ、まずはガギエルが言った。
「あそこの奥方がか」
「非常に勘気の強い方とは聞いていたが」
「その勘気を抑える為にか」
「煙草を吸っておるのか」
「そうして落ち着いているのか」
二人で巨城を見つつ言う。
「それでは何にもならんぞ」
「煙草を吸って不健康になってもらわないとな」
「それで気持ちが落ち着いてどうする」
「病は気からだ」
「気が静まってはどうにもならん」
「それでは本末転倒だ」
「気も乱れてこそだが」
そうなってももらわないといけないというのだ、彼等にとっては。
「煙草を吸わないといらいらする位でないと」
「困るというのに」
「しかも城の奥方だぞ」
「ご側室らしいがこの国の主のお子を産まれかなりの力を持っておるという」
「その様な方こそ乱れて欲しいのだ」
そうなれば城、そして天下にも影響を与えるからだ。悪魔としては世が乱れる様になればそれが実に楽しいのだ。
だからだ、彼等はここで言うのだった。
「煙草を吸って吸い続けてな」
「そうして欲しいというのに」
「これでは駄目だ」
「何とかせねば」
「城の奥方に煙草を売らぬ方がよいか」
「そうすべきか」
こう思った、だが。
またあの侍が来て煙草を買いに来たが。
支払いの金の額にだ、二人共仰天して侍に言った。
「何ですか、この金は」
「こんな金煙草の支払いではないですぞ」
「胡椒とは違います」
「またこれは」
「胡椒?あんなもの何でもないが」
侍はこの国の価値から自分が出した大判の数にびっくりしている悪魔達に言った。ただし侍は彼等が人間でないとは知らない。
「買っても」
「あっ、この国ではそうか」
「そうだったな」
悪魔達はここが日本だということを思い出した。肉を食べることはあまりなくしかも胡椒以外の香辛料もある国なので胡椒を貴重とは思っていないのだ。だから安いのだ。
「胡椒は何でもない」
「そうした国だったな」
「いや、驚いたあまり我を忘れてしまった」
「うっかりしておったわ」
「何を話しておるかわからぬが」
侍は二人に怪訝な顔でまた言った。
「奥方様が煙草をいたくお気に入れられてな」
「それで、ですか」
「この謝礼ですか」
「大判をここまで」
「そうなのですか」
「そうじゃ、遠慮は無用じゃ」
まさにというのだ。
「貰っておくのだ」
「では」
「その様に」
「そして煙草をじゃ」
侍は二人の悪魔達にさらに言った。
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