第一章 天下統一編
第十五話 使者
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翌日の朝、俺は豊臣軍が周囲を囲む中を掻き分け、一人大手門前まで進み出た。俺は武器を一切持っていない。俺が大手門の側近くまで進み出ると北条方から鉄砲が撃ち込まれた。鉄砲の弾が地面を抉り砂埃が舞う。俺は驚き身体を硬直させるが自分を発奮すると、俺は勢いよく息を吸い込み、口を大きく開いた。
「豊臣家家臣、小出相模守俊定と申す! 城主と話がしたくまかり越した次第。城主にお取り次ぎ願いたい!」
俺は大手門前で必死に大きな声を出し自分が使者であると北条方に伝えた。大手門の扉は何も反応がなかった。俺は再び先程言った口上を繰り返した。喉が枯れるほど叫んだ頃、大手門の扉が開き一人の具足に身を包んだ侍が現れた。その侍は右手に抜き身の刀を持っていた。
「私は、北条家家臣、清水新五郎吉久と申す者。城主がお会いになられると申しております。武器を持たずにゆっくりとこちらに参られよ」
清水吉久と名乗る男は年の頃は五十過ぎに見えた。俺は両手を挙げ武器を持っていないことを相手に伝えた。
「武器は持っておりません」
俺が清水吉久に言うと俺はゆっくりとした足取りで歩き出した。彼の側近くまで来ると彼は俺の具足を検めだし俺が暗器などを隠し持っていないことを確認していた。
「武器は持っていないようですな。失礼した」
清水吉久は俺に謝罪した。
「お気になさらないでください。私が同じ立場なら同じことをしたでしょう」
「かたじけない」
清水吉久はそう言うと具足の脇から布を取り出した。
「しばし不自由をおかけしますが、これで目隠しをさせていただきます」
目隠しをされた俺は清水吉久に手を繋がれ足下が覚束ない状態で何処か分からない場所を進んで行く。清水吉久は俺に時折「足下に段差があります。お気を付けください」と声かけして俺の歩調に合わせてくれた。おかげで足下を踏み外して転けるようなことは無かった。
随分と歩いたと思った頃、清水吉久の動きが止まる。俺も清水吉久に倣い歩くのを止める。
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