第一章 天下統一編
第十五話 使者
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とは変わりませんが、細川様が一部で戦果を上げるだけで全体の戦闘では敗れております。この状況で北条氏規が降伏するとは思えません」
「黙れ!」
織田信雄は俺に扇子を投げつけてきた。俺は扇子を避けずに頭で受け止めた。俺の額から鈍い痛みを感じる。だが、俺は織田信雄から視線を逸らさない。織田信雄は俺の態度が気に入らないのか睨み付けていた。
「小僧、私の采配が無能と申すか!」
織田信雄は声を荒げ俺に激昂した。武将達は視線を落とし沈黙していた。お前が無能だから被害が出ているんだろうが。そう言いたい気持ちを押さえた。
「そのようなことは言っていません。乱戦となれば」
「黙れ! 黙れ! 黙れ!」
織田信雄は足音を踏みならしながら俺の目の前まで来ると俺を見下ろしながら睨みつけた。
「初陣したてのお前に戦の何が分かる!」
俺は両手を床につけ頭を少し下げた。
「私の言葉が内大臣様をご不快にさせたのならばお詫び申し上げます。ですが、関白殿下のご意向を無視することも問題にございます。そう考え無礼と承知で意見させていただきました」
「お前に言われずとも忘れてはいない!」
織田信雄は声を荒げ俺を怒鳴った。完全に切れているようだ。
「北条氏規に最後の機会を与えてやる。お前が使者として城に出向き、『降伏を拒否すれば城を総攻めにして城に籠もる奴らを血祭りにしてやる。女子供だろうと容赦せん』とお前が北条氏規に伝えるのだ。関白殿下も降伏を拒否した者をどうしようと文句は言うまい。総攻めで北条氏規を拘束したいならお前の好きにすればいい。誰も止めはしない。ただし、お前が拘束する前に他の者が北条氏規を槍で串刺しにしているかもしれんがな」
織田信雄は北条氏規を殺すつもりでいる。
いずれにしても使者として出向く以外にない。これを拒否したら俺は織田信雄に軍規違反で手打ちにされる可能性がある。織田信雄は俺が北条氏規を降伏させられるとは考えていない。
織田信雄は北条氏規を殺す大義名分が欲しいんだ。北条氏規へ俺を使者として送り、北条氏規が降伏を拒否すれば直ぐに城攻めに移るはずだ。北条氏規を殺さざるえなかった原因を俺に全部押しつけるつもりでいる。
だが、感情に流され冷静さを欠く織田信雄では城を落とせないだろう。韮山城には十分な弾薬を調剤する材料と大量の鉄砲が運び込まれている。大手門に兵を集中させる戦術では寄せ手が鉄砲の餌食になり兵が損耗するだけだ。それを理解せず大手門からの集中突破に固執するのは愚策といえる。大手門を落として進軍することには賛成だが、俺の策を織田信雄に献策するつもりはない。
精々盛大に失態を犯してくれ。俺は心の中で織田信雄を侮蔑した。
「内大臣様、お待ちください」
静まりかえった陣所で織田信雄
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