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トシサダ戦国浪漫奇譚
第一章 天下統一編
第十五話 使者
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かけると、彼らは織田信雄の方を向き直ぐに視線を逸らし自分の席にそそくさと移動しはじめた。俺も彼らの後に続き自分の席に座る。俺の席は一番末席だ。この席は織田信雄から一番遠いはずだが、織田信雄の視線を未だに感じる。俺は嫌な予感しかしなかった。





「皆々、よく集まってくれた」

 織田信雄は招集をかけた武将達に声をかける。武将達の表情は優れない。山中城が一日で落ちたことが衝撃だったのだろう。
 俺達は二日経っても韮山城を落とせていない。だから彼らは余計に落ち込んでいるんだろう。明日からの城攻めが心配になってきた。焦って勇み足になる武将が出てこないか心配だ。馬鹿な武将が死のうが一向に構わないが巻き込まれることは迷惑だ。

「我らも悠長に城攻めしている時ではない。明日から今まで以上に発奮し城攻めを行ってくれ!」

 織田信雄は声を大にして武将達に叱咤した。冷静にならないといけない総大将が冷静さを失ってどうする。
 しかし、織田信雄の方針を非難する訳にもいかない。総大将の方針を公然と非難することは戦場において禁止らしい。もし、非難すれば最悪軍規を犯した者として死罪になることもあり得る。
 武将達の一部は織田信雄の方針に反対なような表情を浮かべるが異を唱える素振りは見せない。

「内大臣様」

 俺が諫言するしかない。この場では俺しか織田信雄に意見できそうにないだろう。俺は秀吉から北条氏規を拘束するように動けと直々に命令を受けている。そして、織田信雄は秀吉から俺が北条氏規の件で動くことを容認するように頼まれている。直球で織田信雄を非難できないが北条氏規に絡めれば織田信雄に意見できる。
 俺が発言すると織田信雄は不機嫌そうに俺のことを見た。

「相模守、何だ?」
「この二日の北条方の抵抗は激しかったです。闇雲に」
「だから何だ! 関白殿下に媚びへつらっておった田舎武者如き叩き潰してくれる」

 織田信雄は腹を立て俺が喋り続けることを制止した。彼は人の話を聞くつもりなどない。自分が見下していた相手が想像以上に手こずる相手だったことが許せないのだろう。彼は頭に血が上って冷静さを失っている。この分ではどれ程の被害を出そうと彼は力攻めに固執する予感がしてきた。

「今以上の力攻めとなれば敵味方の被害が一層激しくなります。そうなれば乱戦となりましょう。私は北条氏規を拘束するように関白殿下から命令を受けています。乱戦となれば北条氏規を拘束することが難しくなります」
「では、お前が使者として出向き北条氏規を降伏するように説得せよ」

 織田信雄はこめかみをひくつかせながら俺に命令した。今、誰が使者として城に出向いても降伏させることはできないだろう。そんなことも分からないのか。

「城攻めから二日。我らが優勢であるこ
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