第一章 天下統一編
第十五話 使者
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係が深いため、北政所の甥である俺に対して身内意識を抱いているのかもしれない。その割には今の今まで声をかけてこなかったのは何故だろう。
「山中城が落ちたのですか?」
俺は動揺することなく福島正則に返事した。韮山城攻めから二日が経過している。時期的に山中城が既に落ちていてもおかしくない。史実で山中城は一日で落ちたと言われている。実際は城攻めから数時間で落ちたらしいから北条方の体勢が一気に崩壊したことは間違い。
豊臣秀次率いる七万からなる豊臣本隊は、山中城に一日で到着し、翌日には城攻めを開始し、その日の内に城を落としたと見ていい。
山中城攻めの陣容は史実通りだと思う。だから、史実通りに豊臣秀次の家老、一柳直末、は城攻めで討ち死にしたはずだ。家老が死ぬくらいだ。豊臣秀次は自軍を前面に押し出し城を力攻めで落としたに違いない。山中城は万を超える大軍で籠城できる大規模な城だ。それを半分以下の兵で守れば必ず何処かに綻びができたはずだ。七万の大軍相手にその綻びは致命傷になっただろう。その上、城将が一枚岩じゃ無い。
山中城は落ちるべくして落ちた。
しかし、秀吉の古参の武将、一柳直末、を失うとはな。
惜しい。
秀次も惜しい人物を失ったと思っているのだろうか。
だが、これで小田原城への道は確保されたに等しい。大軍を阻むには箱根一体の地形を利用した防衛しか無い。北条の本拠地である相模国への道を守る山中城が落ちたことで、伊豆国にある防衛の要となる城は寸断され連携できずに孤立した状態になったに等しい。
「やけに落ち着いているのだな」
福島正則は俺の様子を見て訝しんでいた。俺は史実を知っているから当然の事実と受け止めていたが、彼らにしてみれば驚くべきことなのだろう。
あまりに澄ました態度だったために変な目で見られている。
「山中城攻めの備えは万全でなく、内輪揉めをして籠城戦をできる状態ではありませんでした。早々に山中城は落ちると思っていましたから驚いていません」
俺は作り笑いをしながら取り繕った。
「相模守、手柄を上げる場所を一つ失ったのだぞ。悔しくないのか!」
福島正則は憮然とし俺に怒り出した。彼は残念な子を見るような目で俺を見ている。
「韮山城をさっさと落として山中城攻めに加わろうと思っていたのに口惜しい」
福島正則と蜂須賀家政は心底悔しそうにしていた。俺達が会話をしていると視線を感じた。俺は視線を感じる方向を何気なく見ると織田信雄と目が合った。彼は陣所の最上段に腰掛け不機嫌そうな表情で俺達を凝視していた。俺は咄嗟に視線を逸らす。
「福島様、蜂須賀様。内大臣様がこちらを見ております」
俺は織田信雄から見えないように右手で口元を隠し小さい声で二人に声をかけた。俺が彼らに声を
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