第一章
[2]次話
食用ナメクジ
連合という国はその中に三百以上の国家と細く分けて一万はいるのではという民族、多くの宗教に文明、文化が内包されている国だ。人口も途方もなく多く様々なものが食べられている。
その中には昆虫やそれに近いものもあり。
蜂や蝉、ゲンゴロウやカブトムシに蚕の蛹といったものを様々な国で食べている。血をたらふくに吸った蛭を食べる文化も多い。
その中でもエスカルゴは有名である、元々は古代ローマの料理であるが。
「カタツムリですね」
「ああ、そうだな」
連合の一国であるボツワナの昆虫学の権威でありジュン=ヘルシング教授は助手のゴロー=セワードに応えた。二人は今共に昼食を食べているがその中にエスカルゴ料理もあるのだ。
エスカルゴをクリームで煮たものを食べつつだ、ヘルシングはセワードにこうも言った。二人共アフリカ系であるがヘルシングの髪の毛は黒で見事なオールバックだ。目は黒で背は一九〇位ですらりとしている。対するセワードは教授と同じだけの背丈だがやや太っている。髪の毛は蜂蜜色で目の色は群青色だ。しかもセワードの鼻は低くアジア系の顔立ちだ。
「一言で言うとな」
「そうですね」
「よくこんなものを食べたものだ」
「全くですよ」
「しかしだ」
ヘルシングはセワードにこうも言った。
「こうして食べてみるとだ」
「美味しいんですよね」
「仕込みの必要があるがな」
この時代では品種改良や飼育方法の革新の結果その仕込みもかなり簡略なものでよくなっている。
「しかし美味いな」
「この通り」
「私も好きだ」
ヘルシングは実際に美味そうに食べている。
「蝉や蜂もいいがな」
「やっぱりこうしたものはですね」
「昆虫やそれに近いものではエスカルゴだ」
これが一番だというのだ。
「私はそう思う」
「私もです」
セワードも同意しつつエスカルゴを食べている。
「そうしています」
「そうだな、それでだが」
「それで?」
「一つ考えたのだが」
ヘルシングはエスカルゴを食べ続けながらセワードに話した。
「エスカルゴが美味いのならだ」
「それならですか」
「ナメクジはどうだ」
エスカルゴ、即ちカタツムリに近い種類のこちらの生きものはというのだ。
「美味いと思うか」
「そうですね、エスカルゴが美味いなら」
「ナメクジもだな」
「そう思いますが」
「それならだ」
「ナメクジを食用にですか」
「品種改良してみようと思っている」
ヘルシングはにこりともせずセワードに自分のこの考えを述べた。
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