第六章
[8]前話
「御前さんがこれだと思うのをな」
「当時の値段でか」
「そのままな、どうせ忘れられていたものじゃ」
ここにあるプラモはどれもがというのだ。
「プラモも作ってもらってこそ、だからな」
「俺が買って」
「作ってくれるならそれでよしじゃ」
「そうか、じゃあ実際にな」
「作ってくれるか」
「買える限りな、じゃあまずは」
享恭はダグラムの主人公メカであるタイトルのそれとサブマリン707を見てだ、興津に言った。その二つを指差したうえで。
「これとこれな」
「その二つか」
「買わせてもらうな」
「毎度ありじゃ」
「消費税も払うな、それで金が出来たら」
「またじゃな」
「来させてもらうな、しかし忘れられて消えても」
多くの人の記憶からだ、作品として。
「こうして残るものもあるんだな」
「その通りじゃ」
「成程な、そのこともわかったよ」
「それもまた世の中じゃ」
「俺もそうしたのあるな、これなんてな」
十年以上前のガンダムのマシンを見て言う、赤い戦艦である。
「作品自体は糞だったけれどな」
「それか」
「特に続編がな、けれどこんな戦艦も出てたな」
「思い出したか」
「ああ、これは買わないけれどな」
赤い戦艦、それのプラモはというのだ。
「忘れてた、誰でもこういうことがあるんだな」
「その通りじゃよ」
「成程な」
自分のことも踏まえてだ、享恭は頷いた。そのうえでプラモを買ってだ。家に帰って説明書を読みつつ作るのだった。連載や放送が終わり多くの人から忘れられ記憶から消えても店に残っていたそのプラモ達を。
消えるもの 完
2016・12・12
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