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女の執念
第五章

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「実は今この土佐にある方が来られています」
「ある方といいますと」
「都から来られた法然という方です」
「法然ですか」
「そうです、非常に法力のある方で比叡山にもおられました」
 その山にもというのだ。
「いまして」
「それでどうしてこの国に」
「何でも院の勘気に触れられたとか」
 後鳥羽院だ、都で第一の力を持たれていた。
「それで、です」
「この土佐にですか」
「流罪になったそうです」
「そうなのですか」
「はい、そしてです」
「その法然という方ならですか」
「必ずです」
 その首に巻き付いたお幸もというのだ、蛇になった彼女も。
「何とか出来ます」
「そうですか」
「はい、間違いなく」
「ではすぐに」
「参りましょう」
 その法然のところにというのだ。
「そうしましょう」
「はい、是非」
 こう言うのだった、そして実際にだった。
 法善は成吉にすぐに出発しようと言い成吉も従った。そのうえですぐにその法然のところに旅立った。すると土佐のある場所にだ。
 小さな寺がありそこに法然がいた、質素な法衣を着ている。穏やかな顔立ちをしていて優しい目をした僧侶だった。
 その彼にだ、法善は成吉と共に事情を見せてその首の蛇も見せた。すると法然は成吉に対して静かな声で言った。
「よく来られました」
「はい」
「お話を伺いました」
「この蛇のことは」
「すぐにです」
 まさにというのだ。
「祓わなければ」
「わしがですか」
「危ういです」
 法然もこう言うのだった。
「ですから今からすぐにです」
「払って頂けますか」
「そうさせて頂きます」
 こう言って実際にだった、法然は成吉の首に巻き付いたお幸がなった蛇に対して熱心に手を合わせた上で念仏を唱えた。するとだった。 
 蛇は煙の様に消え去り浄化された、そしてだった。
 成吉は自分の喉に手をやり蛇がいなくなったことを確かめてだ、法然に満面の笑顔で言った。
「有り難うございます」
「これで蛇はです」
「いなくなりましたな」
「はい」
 確かにとだ、法然も答えた。
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