第四章
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「そもそも何故蛇になった」
「決まってるよ、あたしは生まれ変わったんだよ」
「蛇にか」
「死んだけれど口の中から出て来たんだよ」
「蛇になってか」
「心がね」
「そしてわしのところに来たのか」
「ずっと会いたかったんだよ」
恨みがましい言葉だった、これ以上はないまでに。
「それで来たんだよ」
「死んだんだ、それならだ」
「成仏しろっていうのかい」
「そうだ、御前は死んだんだ」
それならとだ、成吉はお幸に必死の顔で言った。
「それならそうなれ」
「嫌だよ、あたしはあんたと一緒にいたいんだ」
あくまでというのだ。
「だからだよ」
「ずっといるっていうのか」
「そうだよ、御前さんとね」
こう言ってだ、そのうえで。
お幸は成吉に襲い掛かった、しかし噛むのではなく。
その首に巻き付いた、だが締めはせずにたりとした不気味な声でく言った。
「これでずっと一緒だよ」
「離れないというのか」
「そうだよ」
その不気味な声で言うのだった。
「何があってもね」
「だから蛇に生まれ変わったのか」
「そうさ、何があっても巻き付いて離れないよ」
こう言って実際にだった、お幸は成吉の首に巻き付いたまま離れなかった。成吉はすぐに住職の話を思い出してだ。
真夜中だったがすぐに法善のいる寺に向かった。そのうえで彼を起こしてその首を見せて枕元でんおkとを話した。
そしてその首を見せてだ、こう言った。
「もう離れぬとです」
「その蛇が」
「はい、そう言っています」
「これは間違いありません」
木の枝に火を点けてそれを灯りとして見つつだ、法善は深刻な顔で言った。蛇は真っ赤な色で法善を禍々しい赤い目で睨んでいる。
「奥方殿です」
「信じて頂けますか」
「この様な赤い蛇はです」
それこそというのだ。
「この世におりませぬ」
「左様ですか」
「まさしく人の嫉妬の魂が成ったもの」
「女房の」
「はい、普通の方法で離れることはありません」
「やはりそうですか」
「相当に強い嫉妬です、ですが」
その情念もというのだ。
「必ずです」
「消せますか」
「はい、拙僧では無理ですが」
それでもというのだ。
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