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女の執念
第三章

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「貴方に何かしてきたなら」
「その時はですね」
「すぐに来て下さい」
 こう言うのだった。
「宜しいですね」
「はい」98
「それでは。しかし」 
 ここでだ、法善はお幸のその死に顔をあらためて見て言った。
「恐ろしい顔ですね」
「そう思われますか、やはり」
「人の顔ではありません」
 最早というのだ。
「鬼の顔です」
「疑着の相が」
「それが過ぎていて」
 それでというのだ。
「恐ろしい顔になっています」
「そこまでですか」
「こうした顔ははじめて見ました」
「住職殿も」
「恐ろし過ぎます」
 お幸の顔を見つつ言う。
「必ず何かあります」
「それでは」
「本当に何かあればです」
 その時はとだ、法善はまた成吉に言った。
「寺にいらして下さい」
「そうすればですね」
「助かります」
 だからだというのだ。
「ですから」
「はい、行きます」 
 こう言うのだった、そのうえで。
 お幸の葬式を終えた、お幸の骸は棺に入れられてそのうえで葬られたが数日後だ。成吉が家で夜寝ているとだ。
 ふとだ、枕元で声がした。その声は。
「まさか」
「御前さん」
 恨みに満ちたその声はお幸の声だった。
「来たよ」
「来たってまさか」
「ここにいるよ」
 その声にだ、咄嗟にだった。
 成吉は起き上がって枕元を見た、するとそこにだった。
 蛇がいた、血の様に禍々しい色をした蛇だった。その蛇がいてだった。成吉に話していたのだ。成吉はその蛇に問うた。
「御前まさか」
「そのまさかだよ」
 実際にという返事だった。
「あたしはお幸だよ」
「死んだんじゃかったのか」
「そう、死んだよ」
 実際にとだ、お幸その赤い蛇も言ってきた。
「あたしはね」
「それで蛇になったのか」
「そうだよ」
 まさにその通りだというのだ。
「あたしはね」
「そしてわしのところに来たのか」
「何だと思う?」
「それがわかるものか」
 苦い顔でだ、成吉はお幸にすぐに返した。
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