第六章
[8]前話
「唐辛子をね」
「一色でいった時よりもか」
「そう、唐辛子の色を鮮やかに出す為にな」
「量が多かったんだな」
「そうだったの、だからね」
「メニューも多かった」
チャンコットはこのこともだ、完食してから言った。
「それを考えるとな」
「唐辛子の量いつもの三倍はね」
「多かったな」
「だからね」
「トイレが大変だな」
「その時が」
最後になってこう話した、デザートのとびきり甘いマンゴーを食べつつ。そして翌日に実際にだった。チャンコットは夜にトイレに行ってから妻に言った。今日は夜勤なのでこれから出勤するその前のことである。
「痛かった」
「ああ、やっぱり」
「三倍どころじゃなかったんじゃないか?」
「五倍だったかもね」
シンラーは今更になってこう訂正した、唐辛子の量について。
「ひょっとして」
「それだと痛いのも当然だな」
「そうなのね」
「御前も覚悟しておけよ」
トイレの時はというのだ。
「痛いからな」
「幾らタイ人でも」
「ああ、量が過ぎるとな」
唐辛子のそれがだ。
「やっぱりくるな」
「お尻に」
「ああ、それとな」
チャンコットはさらに言った。
「出ただろ」
「ええ、それの話もするのね」
出たそのものについてもとだ、シンラーもすぐにわかった。
「そうなのね」
「凄い色だったぞ」
「っていうと」
「赤も緑もあってな」
その色がというのだ。
「青、黄色、橙、黄緑、紫ってな」
「虹色じゃない」
「黒も白もあった」
つまりそれぞれの唐辛子の色がというのだ。
「あった」
「そうだったの」
「ああ、ただな」
「ただ?」
「混ざってた」
それぞれの色がというのだ。
「それはな」
「お腹の中では混ざるから」
「だからな」
料理の時はしっかりと分けられていてもというのだ。
「それは違ってたな」
「そうだったのね」
「ああ、それで出たのはそうだった」
「何かそれは複雑ね」
折角奇麗に分けたのにとだ、シンラーは夫に苦笑いで応えた。
「本当に」
「そうね、じゃあ御前もな」
「汚い話だけれど」
「絶対にそうなるからな」
「覚悟しておくわね」
そしてだった、シンラーもチャンコットと同じことになった。出たものを見てそうしてだった。痛さと共に知ったのだった。奇麗に作っても最後は混ざるものもあるということを。
七色唐辛子 完
2016・12・21
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