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止められない
第七章
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「堀なぞ埋めさせてはならぬ」
「そうされては意味がない」
「この城の守りのかなり大事なものだぞ」
「堀は埋めさせるな」
「絶対にならんぞ」
 幸村や又兵衛達はこう言った、だが茶々は違っていた。
「この城にいられるなら外掘位構わぬ」
「和睦の条件のこの文面はおかしくないか」
「どいうとでも取れるぞ」
「それこそ外掘だけで済まぬのではないのか」
「茶々様は即決されたが」
「よいのか」
 幸村達は危惧するばかりだった、そしてその危惧は当たり。
 徳川方は外掘では済まず城の全ての堀を埋めてだった、城壁も石垣も門も櫓もその全てをであった。
 残るは本丸だけとなった、天下の名城と言われた大坂城は完全な裸になった。藤堂はその城を見て言った。
「見よ、あの有様を」
「完全な裸ですな」
「戦になれば一気に攻められますな」
「守りはなくなりました」
「何と楽に攻められることか」
「もう城にいる意味はない」 
 全く、とだ。藤堂は天守閣だけは見事なままの大坂城を見て言った。
「大坂にもな」
「最早徳川家に従うしかありませぬな」
「ここで頭を下げれば国持大名であることは許してもらえます」
「もう降るしかない」
「大坂を出るしかないですな」
「そうじゃ、しかしそうはならぬ」
 多くの者がそうするしかない状況と見ていてもだ。
「茶々様はわかっておられぬからな」
「浪人達を去らせるのも何とかなりますが」
「幕府に頭を下げれば」
「しかし茶々様は誰にも頭を下げられず」
「あのままですな」
「そうじゃ、また戦になるわ」 
 藤堂にははっきりと見えていた、これからのことが。
「そしてその時はじゃ」
「はい、遂にですな」
「何もかもがですな」
「そうなるわ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 彼の読み通りまた戦になった、最早裸になっている大坂城は守りを期待出来ず外での戦いになった。
 こうなるともう豊臣方に勝ち目はなかった、幸村も又兵衛も討ち取られていき。
 そして遂にだ、城は陥ちてだった。 
 茶々は秀頼と共に自刃し火薬に火を点けて爆発の中に消えた。その爆発と炎を見てそしてだった。藤堂はまた言った。
「こうなったな」
「はい、やはり」
「茶々様は亡くなられました」
「そして豊臣家も」
「何もわからず勘気だけが強い方が一番上でじゃ」
 そしてというのだ。
「誰も止められぬのではな」
「滅びる」
「そうなるのですな」
「滅びぬ筈がない」
 それこそというのだ。
「むしろ自らじゃ」
「滅びる」
「そうしたことですか」
「豊臣家は滅ぼされたのではない」
 家康、彼によってだ。
「自らじゃ」
「滅びた」
「そういうことですな」
「その通りじゃ、豊臣家は自ら滅んだのじゃ」

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