第二章
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「そうしたものに普通の者が行ってもじゃ」
「よくはないですか」
「返り討ちに遭うばかりですな」
「それこそ相当の強者か法力なりを持っている者でないと」
「太刀打ち出来ませぬな」
「だから止めたのじゃ」
彼の下にいる武士達をというのだ。
「町の民達にも触れを出せ」
「新月の夜には外に出るな」
「その様すにですな」
「そうじゃ、下手に妖怪に民達を殺させぬ」
藩主としてだ、継政は言った。
「話が終わるまでそうせよ」
「わかりました、ではすぐにです」
「町にお触れを出させます」
「そしてそのうえで」
「新月の夜に民達は出させませぬ」
家老達も口々に言った、だが家老の一人が継政に問うた。
「ではどうして話を収めますか」
「うむ、実は心当たりがある」
「そうなのですか」
「うむ、領内に一人優れた山伏がおってな」
「その山伏をですか」
「余が読んでじかに話す」
そうするとだ、継政は自分に問うた家老に話した。
「そしてことを収めてもらう」
「その山伏に」
「そうする、ただ術が強いだけでなく腕も立つという」
「腕もですか」
「何でも父上の頃は大層強い武者力士だったそうでな」
「力士あがりですか」
「この町に住んでおって鬼の様に強かったという」
その山伏のこともだ、継政は話した。
「何でも妻と子を失い世の無常を感じ山に入ったという」
「そして山伏となった」
「そう聞いておる」
「そうした者ですか」
「この者ならおそらくな」
継政は目の光を強くさせて言った。
「ことを収められる」
「では」
「おる山はわかっておる」
既にというのだ。
「人をやりな」
「そのうえで」
「会って話をしよう、近いうちに江戸に行かねばならんが」
参勤交代でだ、大名ならば必ず三年のうち一年は江戸に入りそこで住まないといけない。江戸幕府が考えた大名統制政策の一つだ。
「その前に終わらせよう」
「わかり申した、では」
「山伏を呼ぼう」
こう話してだ、継政はその山伏がいる山に人をやった。そして城内の茶室にその山伏を呼んだ。山伏は見事な体格で背は他の者よりも頭一つどころか二つは大きい。髭が濃く太い眉の逞しい顔をしている。
山伏は継政に深々と一礼してからだ、重く低い声で名乗った。
「市兵衛と申します」
「話は聞いておる」
「それがしのことを」
「実に優れた山伏とな」
「恐れ入ります」
「そして御主に来てもらったのには訳がある」
継政はその山伏、市兵衛にあらためて言った。今城下町で起こっていることを。話を聞いていて永元は眉をしきりに動かした。
その眉の動きを見てだ、継政は目を強くさせて問うた。
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