第一章
[2]次話
五人娘
唐代のことだ。徐州の董家には五人の娘がいた。
それなりの家なので五人にはそれぞれ名前があった。
一番上の娘は芙蓉、二番目の娘は白梅、三番目は菖蒲、四番目は黄菊、最後は紅華という。五人共見事な娘で主の董勝も妻も五人の兄である董明もこんなことを話していた。
「さて、良縁だな」
「ええ、それに恵まれればね」
「何よりだよ」
こう話していた、だが董勝はこうも言うのだった。
「しかし五人共幸せになって欲しい」
「娘だからよね」
「そうだ」
妻に対してもはっきりと答える。
「何といってもな」
「そうよね、私もよ」
「だからいい相手といきたいが」
「難しいところだね」
董明は両親の話を聞いて言った。
「それは」
「五人共、ということはな」
「うん、僕も思うよ」
実際にだ、董明は父に答えた。
「それは」
「そうだな、それは事実だが」
「それでもだね」
「そう思っている、どうしたものか」
「そういえば」
ここで妻が夫と息子に言った。
「同じ徐州、小沛に李家というお家があって」
「李家?あの豪商のか」
「ええ、あの家よ」
董家は徐州の彭城即ちそのまま徐州で米を商っている、やはり豪商と言っていい家である。
「お肉を売っているね」
「そうだったな」
「それでその李さんのところに五人の息子さんがいて」
そしてというのだ。
「末に娘さんがいるのよ」
「五人兄弟と一人娘か」
「そうよ」
「そうか、娘もいるのなら」
ここでだ、董勝はこう言った。
「董明の嫁にもな」
「なれるわね」
「ああ、丁度いいか」
「じゃあお話してみる?」
その李家とだ、妻は夫に提案した。
「董明のことも含めて」
「それがいいな、それならな」
「ええ、じゃああちらに人を送って」
その小沛にいる李家にというのだ。
「お話をしましょう」
「そうだな」
こうしてだった、董家はまずは李家に人を送って婚姻の話を提案することにした。すると李家の方でもだった。
「それなら」
「こちらも相手が欲しいと思っていた」
「それなら」
「是非共」
こう応えてだ、そしてだった。
李家は了承した、このことに董家は喜んだ。しかし。
ここでだ、一つの問題があった。それはというと。
実は董家の娘達はまだ若い、若いどころか幼かった。何しろ一番上の芙蓉でまだ十歳で結婚はまだ先だった。董明は二十歳だったが。
「あちらの末娘さんは」
「そうだ、五歳だ」
董勝は息子に答えた。
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