第80話 愛想
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ただ、そのペルソナのせいでこのコを押し付けられたのは誤算だったけどね......
ひたすら人間に媚びを売る小動物のように愛想を振りまいていたある日。
すっかり研究施設内で手間の掛からない『良い子』になっていた警策にとある研究者が一人の少年を紹介した。
「ね!空いた時間で良いからこの子と遊んであげてくれない?」
車椅子に座っている少年は点滴を受けたままで顔を赤くして俯いていた。
髪は警策のように真っ黒であるが少年の瞳を見た瞬間に背筋が冷たくなる。
紅い瞳に巴紋が浮かんでいる異形の眼をした何処か寂しげな少年。
「この子は『ララ』。同年代の友達が居ないから話しをするだけでも構わないから仲良くしてあげて」
「......ええ、私でよろしければ」
正直に言ってしまえば面倒くさいという一言に尽きた。
ずっと取り入る事に、気に入られるように大人達に振舞ってきたがここで同年代のしかも異性ともなればどのようにして良いか分からない。
大して権力も無いであろうこの少年と仲良くなる事に果たして意味があるのかと内心考えてしまった。
しかし、アダルトチルドレンは感情を封じ込めて言いなりに徹しなければならない。研究者が『仲良くしてあげてね』と言ったら鬼だろうがタランチュラだろうが仲良くするのがここのルールだ。
それ以来、実験の時以外はいつも彼の部屋に居るようにしている。
部屋の監視カメラに良く映えるような位置どりを考えながら良い印象を画面の向こう側に伝える為に。
「こうざくみとり......みとりさんで良いかな?」
少年は初めての女性相手にどうすれば良いか分からないようで照れながらも懸命に話し掛けてきている。
まあ、社交辞令程度の受け答えなら応じるわよ
「なんで外に出ちゃダメなわけ?」
「なんかチリョーみたいなんだ。それがマダラになるためだって」
「?まだら?」
意味わからん
「僕も良く分からないんだよね。ゼツからは兄だって教えて貰ったんです。それに妹の為でもあるって」
「ふーん、兄妹がいるんだ」
「逢った事ないですけど」
家族の事を話す彼は少しだけ誇らしげだった。
「いつか逢ってみたいんだよね。マダラ兄さんと妹に......そして一緒に暮らしてみたい」
「考えていれば叶うんじゃないかしらぁ」
弟の様であり、歳上の兄のような丁寧な言葉に凸凹とした印象を受ける。
きっとこの堀の向こう側にこのコを待っている家族が居るんだと分かった途端になんかずっと独りだった自分とは違っていて恵まれた存在のララに少しだけ嫉妬した。
「ありがとうね......みとりさんの夢も叶うよ」
窓際で二人並んで話している時にララの瞳が妖しく光だして巴紋がクルクルと回り出して、引寄せられて魅入ってしまった。
宝石
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