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世界をめぐる、銀白の翼
第三章 X《クロス》
忠犬
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そして、その腕を一本背負いで投げ飛ばし、長岡からコックローチアンデットを離した。

彼女の前に立つその姿は、侍と騎士を合わせたような体裁で、うっすらと小麦色の乗った色をしている。
腰には刀を携え、真っ白なマントを羽織り、頭からはまっすぐに立った耳が一対あった。

目元にはマスク――――というよりも真っ白なバイザーをしており、視界確保のための穴が鋭い視線を放つかのように空いている。
そう、まるで正体を知られてはいけないヒーローのように。



そして腰にあるベルトの紋章で、彼がアンデットであることが窺い知れる。



だが、どうやらコックローチアンデットの味方ではないらしい。
それはコックローチアンデットの表情からしてわかる。コックローチアンデットの顔にある感情は「驚き」そしてほんの少しの―――――




「貴様・・・・アンデ・・・・・!!!」

「すまんが、それは適切な名ではない」



コックローチアンデットの口から出るその言葉を、違うと言って遮るシバイヌアンデット。


そう、これこそが彼の真の姿。

自分は力なきアンデット。
消して自らの繁栄のためだけではなく、他者のためにあろうとするもの。

ゆえに、彼らは強大な力の大半を捨てた。





しかし今こそ。

守るために、防ぐために、立ち塞がるために
自らの肉体を再構築し、かつては捨てた本体の姿と力を以って、主を守護する騎士とならん。




腰の刀に手を乗せて、長岡の前に立ち主を守らんとするその忠犬は、自らを種族でではなく、確固たる個体としてこう名乗った。




「我が名は凩!それが・・・・我が主より承りし誇りある名だ!!」




ドォウ!!



全身から噴き出る闘気が、マントをなびかせてバタバタと騒がせる。
まるでそれが、この者の怒りを表しているかのごとく。



それを見てコックローチアンデットがうろたえながらもハッ、と笑い、凩を指さし叫んだ。


「己が種の繁栄ではなく、統率者についた物好きな野郎がいたってのは聞いてたがな・・・・なるほどね・・・・お前が!!」

「いかにも。我らのような不死生物には、だからこそ信念や誇りといった確固たる柱が必要なのだ」

「なにをわけのわからんことを!!!」



ドッ!!



凩の言葉を一蹴し、コックローチアンデットが高速で動きその場から姿を消す。


攪乱のためか、コックローチアンデットはと凩と長岡の周囲を駆けまわる。
二人の周囲がバシシシシ!と地面が少し撥ね、明らかに狙われている状況。


しかもこれだけ開けたこの場所で、奴の姿は影すら見えない。
だがこの忠犬は
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