93部分:第九話 夜叉の窮地その三
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第九話 夜叉の窮地その三
「俺達夜叉百八人は全て夜叉姫様の下に対等だ」
「それもまた知っている」
「いや、知らないな」
「そうだ」
二人はまた武蔵を見ていた。二人の武蔵に対する敵意は明らかだった。
「これは何故かわかるか」
「階級なぞ必要ないということだ」
二人の言葉は続く。
「夜叉姫様への絶対の忠誠心があるからだ」
「所詮傭兵である貴様に対してわかるか。我等の忠誠心がな」
「おい、貴様等」
見るに見かねた壬生が二人を止めに入った。
「いい加減にしておけ。今は仲間割れをしている場合ではない」
「壬生、ではいいのか」
「傭兵に大きな顔をさせておいてな」
「武蔵はそんな男ではない」
壬生は武蔵を庇うのだった。武蔵が何を言わないでいても。
「御前達もそれはわかっている筈だ」
「騙されているだけだ、貴様は」
「貴様もまた夜叉ならわかる筈だ」
二人の言葉は続く。しかしここで夜叉姫が出て来た。
「止めなさい」
「はっ、これは」
「失礼しました」
二人はここで夜叉姫に対して頭を垂れるのだった。
「将棋の試合に向かいなさい。いいですね」
「わかりました。それでは」
「すぐに」
「攻介」
夜叉姫は今度は壬生に対して声をかけた。あえて壬生の名前を呼んだのだった。
「貴方は黄金剣を使いこなせるようにしなさい。宜しいですね」
「わかりました。それでは」
「八将軍のうちの六人が戻るまでもう少し。ですがそれまでの間は」
「私と黄金剣がですか」
「そうです。ですから」
「わかりました」
壬生はまた頭を垂れる。
「夜叉で随一の剣の腕前、期待しています」
「姉上の期待、裏切りません」
「御願いしますよ。そして武蔵」
「はっ」
武蔵の名前が出たところで陽炎と妖水の目がまた剣呑なものになる。それはかなり強いものだった。今にも攻撃を仕掛けんばかりのものだった。
「貴方には引き続き指揮官としての役割を期待しています」
「わかっています」
「他の者の言葉は気にすることはありません」
夜叉姫はこうも武蔵に言った。
「貴方の力、私は高く買っているのですから」
「ですが姫様」
「こいつは」
また二人は武蔵を見据えつつ言う。
「忍ではないです」
「それでいて普通の世には生きられぬ化け物」
「よいではないですか」
だが夜叉姫は笑いつつその言葉を打ち消すのだった。
「私はその化物の様な力を買っているのですから」
「・・・・・・わかりました」
「姫様がそう仰るのでしたら」
夜叉姫にこう言われては二人も為す術もなかった。彼等にとっては夜叉姫への忠誠心こそが絶対のものだからだ。だからこそ逆らえなかったのだ。
「わかりました」
「では今より」
我等はまた頭を垂れ
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