ターン71 鉄砲水と優しき闇
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だのは、意外にもこれまでじっと勝負を見ていた翔だった。
「あの動き……まさか、お兄さんの!」
「知っているノーネ、シニョール翔!?」
「あのユベルの伏せていたカード、あれは、まさか……」
その驚きようを見て、今初めて翔の存在に気が付いたと言わんばかりにユベルが笑う。先ほどの悔しがりもどこへやら、今の防御がすっかり元の余裕と皮肉めいた態度を取り戻させてしまったらしい。
「おや、ヘルカイザーの弟君じゃないか。そうとも、君の予想通りだよ。ヘルカイザーのカード、さっきの記念に1枚貰っておいたのさ。トラップ発動、パワー・ウォール……ダイレクトアタックにより受けるダメージを、デッキのカード1枚につき500ポイント軽減させる。6枚のカードを捨てさえすれば、今の攻撃もダメージは0だ」
「ヘルカイザーが……!?」
それで、ようやく分かった。いや、これまでなるべく考えないようにしていた事実を突き付けられた、というべきか。なぜ、ヘルカイザーがここに来ていないのか。ユベルはあの時、アモンから離れてどこに行っていたのか。ヘルカイザーを相手に戦っていたのだとすれば、ちょうど僕とアモンのデュエルが終わったぐらいのタイミングで奴が戻ってきたことにもつじつまは合う。
そうか、ヘルカイザーが倒されたのか。後で相手してくれるって、約束したのにな。
……嘘つき。
いや、悲しむのは後でもできるし、少なくとも今はその時ではない。感傷を一時的に切り捨て、代わりに皮肉を叩きつける。
「……覇王も覇王で手癖悪かったけど、あれもお前譲りだったわけね。悪いね、チャクチャルさん。伏せカードが読めなくて」
『いやいや、気にすることはない。あれで十分仕込みはできた』
「仕込み?」
なんか、またよからぬことでも企んでたんだろうかこの神様は。返事代わりにくすくすと上機嫌そうに低く笑い、ユベルに注意を向けるように促す。
『ほらマスター、今から面白い物が見えそうだぞ』
「え?」
つられるままにユベルに視線を戻すが、特にさっきまでと変わったところは見られない。何が起きたのか、と改めて問いただそうとしたところで、異変が起きた。
「うっ……?」
ユベルが突然胸を抑え、苦しそうによたよたと数歩前に出る。少しの間何かを堪えるように立っていたが、やがてその体がゆっくりと地面に倒れた。
「え、ちょ、何したのほんとに!?」
『まあ見ていてくれ。すぐに化けの皮が剥がれるはずだ』
いくら意識がユベルの物でも本来あの体は僕らの友人、ヨハンのものだ。それがここまでおかしな様子を見せられるとさすがに心配になってくるが、有無を言わさぬ調子に押し止められてただ見ていることしかできない。僕、十代、クロノス先生、翔。4人が遠巻きに見守る中で、気絶して
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