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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン71 鉄砲水と優しき闇
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いるヨハンの体からオレンジ色の人型が幽体離脱さながらにふわりと浮き出た。何度も見てきたあの姿、僕が見間違えるはずがない。

「ユベル!」
『よしよし、うまくいったようだな。さあマスター、もう遠慮することはない。次からは勝ちに行くぞ』
「ありがとう、チャクチャルさん。さあユベル、僕はカードをセットする。これでターンエンドだ!」
「やって……くれたね……!」

 満足げなチャクチャルさんとは対照的に、これまでで一番憎々しげな怨嗟の声が人型の口から聞こえてくる。思わず身震いしたくなるのを堪えてまっすぐ見返してやると、これまでデュエルエナジーの塊だった人型がさらに変化する。めきめきと音を立てて一対の翼が生え、左腕の肉と骨が飛び出てぎこちなく変形し、腕に直接デュエルディスクを生やしたような形になる。頭が、手が、足が、そして全身が新たに実体化した悪魔の姿を構築し、やがて完成した肉体がその二色に輝く眼をゆっくりと見開いた。

「これが、ユベル……」

 そこにいた存在を、なんと形容すればいいのだろうか。まさに悪魔、と呼ぶには少し人間に近く、かといって絶対に人間であるとは言いようがない異形の存在。どちらの特徴も持つがゆえに、そのどちらにもなりきることのできない人型。
 そうか、こいつが。これが、ユベルか。

「ボクに1つ、たった1つだけ誤算があったとすれば、それは君のことだと今になって思うよ。コブラが拠点にしていたあの廃寮で。最初に君たちを送った砂漠の世界で。始末する機会はいくらでもあったはずなのに、毎回君は生き延びてきた。その結果がこれさ……まさかボクの真の姿を、十代以外に晒さなければならなくなるとはね。とんだ屈辱だよ」

 苛立ちや怒りが極限を通り越して1周したのか、ユベルの声は思いのほか淡々としていた。だからこそ、これまで以上に油断できない。真の姿まで引きずりだした以上、もう遊びや不要な挑発を入れるつもりは全くないだろう。本気で、この僕を殺しにくる。でも、僕にだって負けられない理由がある。

「僕のターン。メインフェイズ開始時に魔法カード、貪欲で無欲な壺を発動。このターンのバトルフェイズを放棄し、さらに墓地から種族の異なるモンスター3体をデッキに戻すことでカードを2枚ドローする。ボクが選ぶのは獣族のトパーズ・タイガー、水族のエメラルド・タートル、ドラゴン族のレインボー・ダーク・ドラゴンだ」

 制約こそ多いものの強力なドローソース、貪欲で無欲な壺。バトルフェイズを放棄してきたということは、このターンはまだ仕掛けてこないのだろうか。ただ今引いたあの2枚のカード、なんとなく嫌な予感がする。
 その予感は、案の定すぐ現実のものとなった。

「魔法カード、宝玉の恵みを発動。墓地のA宝玉獣2体、アンバー・マンモスとサファイア・ペガサ
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