百十五 それぞれの道
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知らせてくれ。決して、不用意に近づいてはならない」
「おいおい、どんな化け物だっての」
揶揄うような水月の戯言を、「化け物じゃない」とナルトは即座に否定した。真剣な顔つきのナルトにつられ、白達もまた表情を引き締める。
「それで?誰を捜せばいいんだ?」
皆を代表して軽く訊ねた再不斬に、ナルトは静かに眼を伏せる。次いで顔を上げたその瞳の青に、並々ならぬ決意が窺えた。
まるで滄海の中で炎が燃えているかのような、どこか、夜明けの色を思わせた。
「世間一般で彼らはこう呼ばれている」
そして、その呼び名が如何にも不名誉だとでも言うように、苦々しげに彼は告げた。
「…―――『人柱力』」
妖魔【魍魎】を倒した真の功労者。
そのナルトが無事に立ち去った後の鬼の国で、紫苑は寝台で横になっていた。
巫女の護衛として仕える事になったドスとキンを控えさせた彼女は、長い髪を掻き上げる。
突然鬼の国に残る事となった忍びである彼らの存在は、正直、非常にありがたい。音忍と言うだけあって音に敏感な為、万が一不届き者が現れても、瞬く間に聞きつけてくれるからである。紫苑もまた、以前より一層巫女として精進出来る。
だが、そんな彼女の心は常に、今はいないナルトへと向いていた。鬼の国を去った彼の無事を祈って、いつものように眠りにつく。
深い眠りの奥底で、紫苑の巫女としての力が無意識に発動していた。
「……ナルト…」
幾度も見た、あの金が倒れゆく光景。
それを彼女は見ることしか出来ない。
止めることも防ぐことも出来ず、ただ己の眼に焼き付ける。
一瞬の光景が彼女の脳裏に強い印象を与える。否定しようもない衝撃的な事実が彼女に予知の正しさを突き付けていた。
斜光がナルトの首元を横切る。
ずるり、と音がした。
鮮血が舞う。ナルトの首元から迸るソレが、彼女の視界を真っ赤に染める。
得物から滴り落ちた血がじわじわと泉をつくってゆく。赤い泉は、『視ている』紫苑の足元にさえ満ちて、彼女は反射的に身体を強張らせた。それでも後ずさりするのを耐える。
眼を逸らしたくなる衝動をぐっと堪え、紫苑は己の力を込めた。
ナルトの首を掻っ切った相手を見極めんと、瞳を凝らす。
その顔は、見覚えがあった。
眼を覚ました途端、紫苑は飛び起きる。バクバクと高鳴る胸を押さえ、彼女は寸前に視た夢の映像を思い返した。
今し方視た光景に酷く動揺する。死は回避できたはずだ。それなのに、何故。
「……ナルト……」
今まで肌身離さず身に着けていた鈴の所在を求めるように、紫苑は布団代わりの薄物を掻き抱いた。ナルトに預けているあの鈴が彼を守ってくれるように
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