百十五 それぞれの道
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で奇岩が音を立てて洞窟の穴を塞ぐ。岩の中央に貼られた『禁』の御札が、閉じる衝撃でひらりと揺れ、同様にナルトの白い羽織も翻った。
「…いつだって空席だよ」
岩壁に穿たれた穴を塞ぐように佇む社。唐紅の社を前に呟かれた声は、風と渓流の音で掻き消える。
ペインの消える間際の言葉に、名ばかりで実の無いという意を込めて答えると、ナルトは軽く水面を蹴った。
谷底の水面はたった一つの緩やかな円を描いて、やがて消えていった。
『暁』が鬼の国に依頼された件に関してナルトはペインから全権を任された。それ故の、以上のあっさりとした事後報告である。
ペイン自身、知り得たかったのは、鬼の国の巫女の予言が妨げとなるか、及び、妖魔が尾獣か否かの結果のみだ。もとよりナルトに一任している身なので、鬼の国の依頼に関して事細かな情報を得るつもりもない。
だが『暁』の妨害になり得る可能性の芽は早々に摘んでおくに限る。故に状況把握を目的としてナルトを鬼の国へ出向かせたのだ。
その代わり、報酬等は好きに扱えと許可されていたナルトはその通り、勝手にさせてもらった。
即ち、妖魔【魍魎】を倒し、尚且つ、木ノ葉との確執をなくしてくれた褒美として何でも望むものを、と訊ねてきた鬼の国に対して、ある無茶な要望を求めたのである。
ペインへの事後報告を済ませ、瞬く間にナルトは再不斬達が待つ宿へと戻った。
ナルトの帰りを待ち構えていた彼らの顔触れは、以前よりも少ない。
再不斬と白、音の五人衆の内の三人である君麻呂・多由也・次郎坊、そして水月と香燐。
それこそが、鬼の国への要望だった。
ドスとキン、音隠れの里で音忍としての彼らを鬼の国の民にしてもらう事。
戸籍を音の里から鬼の国へ移し、元から鬼の国出身であるかのように偽造する事こそが、ナルトの望みだった。
ナルトは以前からずっと、自分についてくるのなら厳しい道のりだと皆に伝えていた。自分の好きな道を自由に選べば良い、と。
しかしながらサスケ里抜けの件で死んだと見做された君麻呂達はともかく、ドスとキンは未だナルトが預かっているだけ、と大蛇丸に認識されている。
よってドスとキンが自由に動くのは感心できないのである。もっとも大蛇丸自身、もうドスとキンの存在すら忘れているかもしれないが、念には念を入れるべきだ。
仮に、たとえ大蛇丸が、ドスとキンの所在が鬼の国にあると知ったとしても、一国が後ろ盾にあれば易々と手が出せない。
要するに、ナルトは鬼の国を隠れ蓑にさせてもらう事にしたのである。
もちろんその代わりと言ってはなんだが、妖魔【魍魎】が倒されたという事実は他言無用だ。
何故なら鬼の国が小さな国家にも拘らず、大国の侵略を受けずに依然として残っていたのは、皮肉にも、鬼
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