第三章
[8]前話
先輩はふとだ、白いふわりとした服装で僕から少し離れてくるくると回りだした、そのうえで僕に言ってきた。
「素敵よね」
「はい、特に」
「特に?」
「あの、今の先輩は」
噴水の下からの赤や青の景色に照らされて蝶や花達に囲まれて白いふわりとした服を着て僕の影のすぐ傍で自分の影と一緒にくるくると踊っていてだ。しかも後ろには大きな黄色い満月がある。
その先輩の姿にだ、僕は心から言った。
「この世のものには」
「またそう言うの?」
「本当にこう思いましたから」
この世のものに思えなかった、とても。
「先輩妖精みたいですよ」
「妖精って」
「いえ、何かもう」
それこそだ。
「夜に踊る」
「オーバーよ」
「オーバーじゃないですよ、何か本当に」
今くるくると踊った先輩はだ。
「不思議な位にです」
「妖精みたいで」
「凄く奇麗で可愛かったです」
「本当にオーバーよ」
「ですからオーバーじゃないですよ」
「全く。そんなこと言っても何も出ないわよ」
左斜めの角度で僕を見てくすりと笑って言ってきた。
「別に」
「出ました、いえ見せてもらいました」
「今の私を?」
「だから凄くよかったです。それじゃあ」
「ええ、もう電車が来るから」
このことは現実だった、もう帰らないといけない時間だ。
「駅に行きましょう」
「そしてまた明日ね」
「はい、学校で」
「お会いしましょう」
二人で笑顔で話してだった、僕達は手をつなぎ合ってそのうえで駅に向かった。夜にとても素敵な姿を見せてくれた先輩と一緒に。先輩のその手の温もりが現実でないことを教えてくれていた。さっきの幻想的な先輩の姿もそうであることを。
月・影・舞・華 完
2017・4・28
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