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殺人鬼inIS学園
番外編:殺人鬼の昔話2 下
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 柳韻は、この世の理を微塵も感じさせない光景に目を奪われていた。かつて精一杯の期待を込めた長姉が、愛弟子だった男に埋め込んだ異物。唯でさえ理解の範疇を逸脱した世界に生きていた束の事が更に分からなくなった柳韻は、既に自らは死して涅槃に居るのではないかとさえ思うようになっていた。

「インフィニット・ストラトス。略してIS。篠ノ之束が創り、提唱した宇宙での活動を想定したマルチフォーム・パワードスーツ。しかし、社会の凡愚共から理解を得られず、白騎士事件によって兵器としてデビューを飾り、核兵器に代わる抑止力として注目されつつあるオーバーテクノロジー。最大の欠点は篠ノ之束にしか製造が出来ず、量産性が効かないという点。女性にしか操作が出来ないという点。現存するISの核部分は467個。未だに模倣すら出来たという情報はない」

 放心する柳韻の前で、ラシャは、やる気のない生徒のようにISの概要を音読する。世間にとって大半が周知の内容であったが、束を鬼子としか見ていなかった柳韻にとっては、何らかの呪文のように聞こえた。

「だが、一つだけ間違いがある。467個しかコアは無いとあるが……所謂ロストナンバーが存在している……俺の体内にな」

 その言葉に反応したのか、胸の傷跡がぴくりと痙攣した。そして、怨念を吐き出すように墨汁のように黒く濁った血を吹き出した。

「ISのコアには意志があるという。その御蔭で操縦者に合った成長をし、進化すると言われている。半信半疑だったが、これは事実だ。最初は生命維持しか出来ない心臓の代替品だった『こいつ』が、徐々にIS特有の能力を発揮できるようになっていった。物体の粒子化による格納もその一つだ」

 ラシャは机に突き刺さっていたアイスピックに手を触れる。根本まで突き刺さっていたアイスピックが光りに包まれて消えていった。恐らく柳韻の大刀もそうやって手中に収めたのだろう。そして、唐突にその大刀を柳韻に投げ渡した。

「……何のつもりだ?」

 残された左手で柄を握りしめつつ、柳韻はラシャを睨みつけた。かつて愛弟子だった男は、出来の悪い生徒に呆れる教師のような嘲弄じみた笑みを浮かべた。

「なに、あんたたちが好んでいる武士の情けってやつですよ。無抵抗のまま死ぬのは嫌でしょう?俺も嫌です。あんたが自らの怠慢を悔やみ、運命を呪いながら死んで頂くためには……やはり、剣で以て引導を渡すのが一番だと思いましてね」

 柳韻は人知れずに闘志を取り戻していた。最早八徳や剣に宿る聖云々などは消え失せていた。怪物と化した男を叩き斬る。その一念のみが胸中に焼き付けられていた。

「覚悟!!」

 柳韻は隻腕であるにも関わらず、大刀を逆袈裟に振り上げた。ラシャは薄皮一枚を斬らせて後ろに下がる。柳韻も避けられる事を読んでい
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