襲撃
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」
「……聞きたいことって?」
まだ片手剣で斬り裂かれた訳ではないので、オーディナル・スケール的には俺のHPはまだ残っているが、エイジがその気になれば次の瞬間には消えていることだろう。それでもまだ逆転のチャンスを探すべく、とにかく目的を聞きだそうと問いかけた。
「ああ……そう、聞きたいことがあって来たんだったな。お前は――」
今この瞬間が面白くて仕方がない――というような笑みを浮かべていたエイジだったが、その質問を発しようとした瞬間から、全ての感情が表情から消え失せていた。まるで能面のような表情から、その言葉だけが紡がれた。
「――ユナ、というプレイヤーのことを知っているか」
ユナ。その名はもちろん聞いたことがある。今もお互いにプレイしている《オーディナル・スケール》専属の宣伝キャラで、世界初のARアイドルの名前としてだ。
ただしエイジの問いかけは、あのARアイドルの《ユナ》のことではないだろう。ユナというプレイヤー、という言い回しからして、あの浮遊城に参加していたプレイヤーの1人――?
「……知らない」
――その答えを聞いた瞬間、エイジの表情は能面から怒りに包まれていた。
「そうだろうな……お前らにとって、僕たちなんてどうだっていい存在だろう!」
俺の首筋に添えていた片手剣を逆の手に持つと、突如として激昂したエイジは握り拳を作ると、そのままこちらに向かって振りかぶった。片手剣による《オーディナル・スケール》でのダメージではなく、殴りつけてくることによる現実のダメージが狙いの一打。
「このっ!」
「っ!?」
ただし黙って殴られてやる訳にもいかず、しゃがみこんだ体勢からタックルでもってエイジを吹き飛ばした。そのまま追撃としたいところだったが、エイジの未知の動きを警戒して距離を置く。
「……なら、もう一つ質問させてもらいましょうか……」
油断なく日本刀《銀ノ月》を向けるこちらに対して、エイジはゆったりとゾンビのように起き上がった。先程の激昂した様子はどこへやら、またもや丁寧すぎる慇懃無礼な口調に戻っていた。ただしその表情に浮かんでいる感情は、怒りではなく明らかな嘲りの感情。
「愛する女に忘れられた気分はどうだ?」
「……何のことだ」
「……何? くく、ははははは!」
エイジが何を言っているのか、本気で分からないとばかりに返答する。そんなこちらの様子のどこが面白かったのか、エイジは腹を抱えて高笑いをしだした。何がおかしいと日本刀《銀ノ月》の柄を握る手に力が籠もるが、こちらから攻撃しても、エイジの人間離れした動きについていくことは出来そうにない。
「ふん……興醒めだな。まだ分かっていなかったのか?」
それだけを言い残
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