第一章
[2]次話
TOKIO
一千万の人口を誇る大都市の中の大都市だ。
この東京にいてだ、俺は思った。
「いい街か?ここ」
「そうだろ」
ツレの耕太の返事はあっさりだった、こいつの姓は池田という。髪の毛が金髪なのでそれがトレードマークだ、染めている。ちなみに俺は名前は小澤治一といって髪の毛は抹茶色にしている。二人共東京の大学に地方から出て通っている。
「俺のいた場所なんかな」
「佐渡か」
「もう田舎過ぎてな」
それでというのだ。
「困るぜ」
「そんなにか?」
「そうだよ、というか御前もな」
耕太は俺にこう返してきた。
「御前生まれ茨城だろ」
「茨城が田舎だっていうのかよ」
「そうじゃないのかよ」
「茨城馬鹿にするなよ」
俺は耕太に怒って言い返した。
「納豆あるし黄門様だってな」
「他あるのかよ」
「あるさ」
「それじゃあ田舎じゃないんだな」
「ああ、俺の生まれ育ったな」
そこは何処かというと。
「北茨城なんてな」
「何処だよ、そこ」
「おい、知らないのかよ」
「水戸なら知ってるさ」
県庁所在地はというのだ。
「けれどそんなとこ知るか」
「福島県との境だぞ」
「平安時代だと僻地中の僻地だろ、鬼婆がいた」
「それは福島だろ」
安達ヶ原があるそこだ。
「茨城にはいなかったぞ」
「じゃあ何がいたんだよ」
「だから黄門様だよ」
「あの人江戸時代だろ」
俺達は二人で言い合った、その東京の大学の中で。とにかくここは俺達のそれぞれの故郷とは全く違っていた。
あちこちに品揃えのいい店があって何でもすぐに揃う、そして遊ぶところもやたら多い。ちょっと環状線で渋谷や新宿や六本木に行くとだ。
「カラオケもゲーセンも食べ飲み放題の居酒屋もあってな」
「楽しいな」
「すぐに遊べるな」
それこそとだ、俺は言った。
「金さえあればな」
「金もな」
その金もだ。
「佐渡とは違ってな」
「いいバイト先一杯あってか」
「その辺りの吉野家なりカラオケボックスなりな」
もう適当に貼り紙を見て入ってもだ。
「それで賄い付きで雇ってもらえて」
「金も入ってな」
「遊べるからな」
「確かにいい街だな、ここ」
「夢みたいな街だぜ」
「物価は高くて巨人の本拠地でもな」
特に後者が嫌だ、俺は楽天ファンで耕太は佐渡人だが阪神ファンだ。
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