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内緒でキスして。
内緒でキスして。




『あっ、石田会長だ!』



廊下を歩いていると、こんな風に下級生に声を掛けられる事もしばしばある。
別に何と会話をする訳ではないけれど、僕の顔が認識されているという証拠。


嬉しい事であり、なかなか面倒くさい、なんて思う事もあり。


「石田」



職員室から教室に帰る途中、聞き覚えのある声に呼び止められる。

振り向かなくてもわかる、声の主。



「何だ、黒崎」

「ちょっと顔貸せよ」



周りにいた生徒は何事だ、と視線をこっちに向けてザワザワと騒いでいる。
それはそうだろう。
黒崎と僕は仲が悪い、という事で学校では有名になっている。


「手短に頼もうか」



とりあえずこのままじゃ大きい騒ぎになる事は目に見えてるので、黙って従い黒崎の後についていく。



「何だ、何の用だ」

「…………」



人気のない階段の下まで来た所で改めて要件を尋ねるが、僕をじっと見つめたまま何も言わない。



「こら、黒崎。呼び出したからには何か用がっっ、……」



腕を引かれ思いっきり抱き締められた。



「…何だ、突然」

「………あー、やっと安心した」

「は?」

「なんか、お前に触りたくてしかたなかったんだよ」

「……何だそれは」

「お前に触れたかった、マジで耐えらんなかったぜ」

「…………」



少し体を離し、だらしない顔でそんな事をほざく黒崎。



「…そう、気が済んだかい?」

「いや、まだ」



そう言って、僕の顔の横に手を添えた。




【内緒でキスして】



この男は、僕の最愛の恋人です。



end


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