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お江戸
第三章

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「遊び方もよくてか」
「もてるってことだよ」
「気風がよくてあっさりか」
「おう、江戸っ子の遊びをしてな」
「それでだな」
「この通りだよ」
 まさにというのだ。
「もてるんだよ」
「そういうことだな」
「ああ、それでな」
 さらに言う太之助だった。
「今日はどの店に行くかだな」
「何処に行くんだ?」
「揚巻のいる店だよ」
 助六の恋人の太夫の名前を笑って出した。
「そこに行くんだよ」
「揚巻のかい」
「ああ、とびきりのいい女がいる店があってな」
「そこに行ってか」
「楽しむぜ」
「そうか、じゃあ俺はな」
 権太も笑って言う。
「白井権八のいる店に行くぜ」
「そいつおたずね者だろ」
 太之助は白井権八と聞いて笑って返した。
「この吉原にいるのかよ」
「それがいてな。その権八とな」
「しっぽりとか」
「夜を過ごすぜ」
「飲むのは般若湯だな」
「そうさ、それを飲んで豆腐も食ってな」
 坊主だから精進ものである。
「それでだよ」
「今夜は楽しむか」
「そうするぜ、じゃあこれでな」
「一旦別れてな」
「朝に」
 遊んで一晩過ごしてというのだ。
「吉原の門で待ち合わせとするか」
「そうするか」
「ああ、じゃあな」
「朝にな」
 二人は笑って言葉と手振りで挨拶をしてだった、それぞれの店に行った。太之助は馴染みの太夫のところに行き権太は稚児のところに行った。そして。
 二人共朝まで遊んだ、酒も飲み床も風呂も楽しんでだった。
 満足した顔で二人で吉原の門まで向かった、朝日がようやく昇ってきた朝もやの中にある門のところに来たのは二人同時だった。
 二人共それで帰るつもりだった、だが。
 ふとだ、その門をがっくりと肩を落として出る若い男を見てだった。太之助は権太に言った。
「ここにいるとな」
「どうしてもな」
「ああいうのは見るな」
「相手が女でも男でもな」
「そういう場所だからな」
 この吉原はというのだ。
「だからな」
「仕方ねえな」
「ああ、しかしな」
「そうした奴を黙って見過ごすのもな」
「粋じゃねえからな」
「笑って囃すのは問題外だ」
 それこそというのだ。
「だからここはな」
「ちょっとあの兄ちゃんに話を聞くか」
「そうするか」 
 二人で話してだ、その肩を落として店を出る男に声をかけた。見れば二人より頭一つ大きい恰幅のよい男だった。
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