前振り魔術師と説教刑事
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「都内湾岸地区で発生した暴力団同士の抗争について一言」
「幸いにも死者は出ませんでしたが、倉庫街で火災が発生し多くの住民に心配させてしまった事をお詫びいたします。
犯人は現在捜索中で、検問など非常線を張って捕まえるのでご安心ください」
「今回の抗争はテロではないかという意見もありますが?」
「近年の非対称戦争に我々も巻き込まれたという一部マスコミの論調については拝見しております。
ですが、テロだったとして今回の事件が国内世論に影響を与えるかについては疑問符を投げかけざるを得ません」
「抗争の背景などは掴んで居るのでしょうか?」
「火災の現場検証によって、何かの製生プラントである事は分かっております。
我々はこれを違法薬物製造プラントであると……」
そこで私はテレビを消した。
倉庫街の襲撃がこちらの想定より早くマスコミに流れて、その対処に追われたからだ。
表沙汰になって誰も喜ばないからと、政府と魔術協会双方ともに情報誘導を行ったが、これを仕掛けた犯人を知って私は意外そうな声をだしてしまう。
「これ、中国が犯人なんですか!?」
「そう。
絵梨ちゃん。
中国の魔術組織は文化大革命で私達よりはるかに深刻な打撃を受けたわ。
魔術系の組織はその為華僑系が取り仕切っているのだけど、今回の仕掛けは中国の工作と国内の大陸派の共同作業って訳」
若宮友里恵分析官がお茶を飲みながら淡々と語る。
日本における政治勢力は保守・革新というカテゴリで政治勢力を見ると間違える。
この国は地政学による政治組織の色分けに、保守と革新という化粧をしているだげで、それは戦前から変わらない。
つまり、大陸と仲良くしようという大陸派--戦前は大東亜共栄圏なんて呼ばれたが--と、海洋派--日英同盟を主導し現政権の対米友好政策を推し進めている連中--の二派にいきつく。
もちろん、この二派の仲は悪いし、それぞれの外国勢力の工作も受けている。
で、私達魔術師は魔術協会が英国にある事もあって海洋派に所属しており、政権与党内主流派だからこそこんな事に首を突っ込んでいられるわけだ。
「多分、絵梨ちゃんが米国から教えてもらった中華ってこれよ」
「え?
華僑系組織じゃないんですか?」
私の質問に若宮分析官は茶菓子のチョコレートをつまむ。
この手の仕事をすると酒と煙草に逃げるのだが、それだと健康に悪いという訳でこの2つを今断っているらしい。
だからチョコレートという甘いものに行ったらしいが。
銀座高級菓子店のチョコレートだから多分酒と煙草もいいものを使っていたのだろう。
「あいつらだけ違うのよね」
「何が違うんです?」
ぱくり。
実にあまくて美味しいのだ
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