巻ノ八十七 佐々木小次郎その八
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「拙者は悪い者じゃ」
「いえ、殿は」
根津はその幸村にすぐに言った。
「決して」
「そうではないか」
「はい、殿程の方はです」
それこそというのだ。
「天下に二人とです」
「おらぬか」
「はい」
まさにというのだ。
「だからこそ我等もです」
「共にいてくれるか」
「そうなのです」
「御主達だけじゃな、拙者をそこまで言ってくれるのは」
「滅相もない、殿だからこそです」
根津は真剣に述べた。
「何度も申し上げますが」
「御主達にとってはか」
「はい、我等は禄も地位もいらぬ」
「ただ己の武芸を極め道を歩みたい」
「そうした者達ですから」
「拙者の様なか」
「求道の方こそと思ったのです」
つまり類は友を呼ぶということだった、根津が幸村に話すのはこのことだった。そのことを話してだった。彼等は九度山に入った。根津は九度山でも剣技を磨くが。
その剣技を見てだ、他の十勇士達も唸った。
「太刀筋だけでなくな」
「前以上に気で切っておるな」
「太刀に気を宿して切る、か」
「時には鎌ィ足も作って」
「うむ、そうしてじゃ」
稽古で鎧を居合で両断してだ、根津は言った。鎧を両断したというのに刃こぼれ一つしていない。それも気を込めているからだ。
「切っておる」
「間合いを離してもじゃな」
「そうして切るか」
「太刀だけで切るのではない」
「気や鎌ィ足でもか」
「それでも切るか」
「太刀を素早く動かせばな」
それでというのだ。
「風が出来る、それが鎌ィ足じゃな」
「そしてその鎌ィ足を飛ばしてか」
「そうして前のものを切る、か」
「そうすれば刃は落ちぬ」
「そういうことか」
「うむ、人をどうしてもじゃ」
刀、それでというのだ。
「脂や血が付くな」
「骨を切れば刃こぼれする」
「どうしてもな」
「それはどうにもならぬ」
「普通に切ればな」
「それでわしも考えた、宮本殿にも稽古をつけさせてもらってな」
そして彼の太刀筋を知ってというのだ。
「刃で切るよりもじゃ」
「気や鎌ィ足でか」
「それで切った方がよい」
「戦の場では」
「そうなのじゃな」
「普通の刀では二人か三人、しかし我等の戦は何十人じゃ」
一人でそれだけを一度に相手にするというのだ。
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