第57話<北上の告白>
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みにした長い髪の毛だけが勢いを残して少しだけ回った。
「もう、良いんだ」
北上の黒い髪の毛が月明かりに鈍く反射している。
「艦娘である以上はさ」
彼女は再び微笑んで私の方を見た。
「そこは受け入れなきゃね」
ゆるやかな風に彼女の前髪がチラチラなびいて、さすがにドキッとした。
舞鶴がずっと何か言いたそうだけど結局は言い切れないらしい。何か彼の怨念みたいなオーラをチクチク感じるんだが。
それには構わず北上は腕を後ろに組んだまま海の上で水面を蹴るような仕草をしている。
「だからさぁ、司令にはもう何とも思ってないンだ」
彼女は今度は舞鶴の方を見た。
「あとゴメンネ。やっぱ今さら舞鶴に戻る気もないから」
「え?」
「なに?」
私と舞鶴は思わず同時に返事をしていた。
それは……どゆこと? そんな話があったの?
私は思わず、舞鶴のほうを見てしまった。
「それは……」
舞鶴は私と海の両方を見ながら、しどろもどろになっている。
もし明るければ真っ赤になった彼が拝めたことだろう。あいつは作戦参謀としてはソコソコ優秀な男だけど。艦娘の心までは、まだ操縦する腕はないらしい。……いや、それは私も同じか。
でも北上の大らかな性格は、ちっとも変わっていない。いや、むしろ彼女なりに、たくさんの哀しみを越えて来たからこそ今の成長した艦娘としての北上自身があるのだろう。そんな北上と、この地で再会できたことは素直に嬉しく思った。
今夜の君と出会えたことで私もまた一つの哀しみを越えられるかも知れない。
『ありがとう北上』
私は心の中で呟いた。
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