第86話 魔界衆との戦い(その弐)
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十兵衛を二人の男が、再び待ち構えていた。
荒木又衛門と高杉晋作だった。
「さすがは、十兵衛。胤舜殿を再び地獄に叩き落とすとは」
又衛門はにやりと笑った。
「又衛門殿か。お主もまた蘇ったのか」
十兵衛は、典太の柄に手を置いた。
「いかにも。胤舜殿と同じくな。十兵衛、それがどういうことは貴公にはわかるはずだ」
すでに又衛門に言われるまでもなく、十兵衛は胤舜に会った時から察しはついていた。
(こんな時代に蘇ったか、天草四朗時貞。そして、願わくば、蘇ってくれるなよ、親父殿)
十兵衛は、ゆっくりと典太を抜いた。
「又衛門、貴公の隣に立っている御仁は、何者か?」
一言も喋らず仁王立ちの男を十兵衛は、指をさした。
「これは、失礼いたしました。剣豪・柳生十兵衛殿と喧嘩が出来るということで、わくわくして名を名乗ることを忘れてしまいました」
仁王立ちしていた男が初めて声を発した。
「私、長州藩。あ、いや、元長州藩士・高杉晋作と申す」
高杉はぺこりと十兵衛に挨拶した。
「ほう、喧嘩ねぇー」
十兵衛は、左手でぽりぽりと顎を掻いた。
「では、高杉とやら。俺と喧嘩したいのなら、心して来るがよかろう。俺は強いよ?」
十兵衛はにやりと不敵に笑ってみせた。
「では、参ります」
高杉は小立を抜いたが、構えもせず両腕をぶらりと垂れ下げた状態で十兵衛に対峙した。
「フフフ。では、俺も抜くとしよう」
荒木もまた剣を抜いた。
(なるほど、これは高杉要注意だな)
十兵衛がそう思うのは、根拠めいたものがあったからだ。
長剣には長剣の扱い方があう。が、剣術など皆無なやくざ者が扱えるように、ただ闇雲に振り回していてもどこか当たる。下手すれば致命傷を負わせることができる。
その反面、小立は違う。
相手が長槍を使っていた場合、長剣を使っていた場合と場合場合で間合いが全く違う。
それを読み、飛び込んで行かなければならない勇気がなければ、一瞬内にやられてしまうだろう。
十兵衛は、さらりとその戦いを喧嘩と呼び、楽しんでいるかのような高杉を又衛門より上と判断したのだった。
とはいえ、荒木も只の剣豪でない。
鍵屋の辻の敵討ちは、荒木の戦略により勝てたといっても過言ではない。
高杉と荒木は互いを見つめあった。
「はははは、十兵衛よ。わしらは、胤舜殿と岡田と同じように二人掛はせぬよ」
荒木は、そう言って笑った。
「そのとおり。喧嘩は差しで行うものと思いませんか、十兵衛殿」
高杉も荒木に続いて、にやりと笑って言った。
「なるほど。二人は別々にこの十兵衛と戦うということでよろしいのだな?」
二人の意外な発言に十兵衛は、少し驚いた。
おそろく高杉も戦術家であり、荒木と念密な計画を立てて戦いに臨んでいるの
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