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俺たちで文豪ストレイドッグスやってみた。
第4話「策略」
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ろう。

 ああも、簡単に。

 恐ろしい。つい先ほどまで、年相応の明るく元気な子にしか見えていなかった彼が、今はただただ恐ろしい。

「……仕方ない、今日は撤退しますか。また新しい手を考えないといけませんね〜」

「俺を前にして、逃げられるとでも思ってんのか」

「普段じゃまず不可能ですね。インチキ能力も大概にして下さいよ」

 そう口では言いつつも、彼は余裕の態度を崩さない。達也が不機嫌そうに顔を歪め、その裏の読めない笑顔の真意を探る。

 ――もし本当に怖くなったら、とりあえずは達也の近くに居るといい。それだけで、まず確実に身の安全は確約される。極端だが、例え超巨大隕石が降って来ようがね

 先程の狼牙の言葉もそうだが、健がそう言うほど彼の力はとんでもないものらしい。だが、狼牙もそれを知って居る様子だったのに今のこの余裕だ。全く意図が読めない。

「僕の連絡を合図に、ウチの連中にこの街で派手にドンパチやってくれと伝えてあります。さて、一体どれくらいの山が積み上がるでしょうかねぇ、僕とっても気になります」

「……その程度で脅せるとでも?俺が『それ』を消し飛ばせるのは、お前も分かってる筈だ」

「えぇ、本当に厄介な力ですよ、『ワールド・エゴ』……ウチであなたがなんて呼ばれてるか、知ってます?『クソみたいに一人だけインフレしたチート野郎』ですよ」

「どうでもいい」

 冷たくそう言い放つ達也に狼牙が呆れた様子で溜息を吐くと、肩を竦めて再び口を開く。

「でしょうね。で、まあ要点ですが……普通にさっき言った通りですよ。まったく、この策を練るのにどれだけ考えた事か」

「――!」

 唐突に。
 達也が何かに気付いたらしく、その両目を見開いた。
 同時に彼の表情が恐ろしい程の怒気に満ち、呪詛をその腹の中に幾億も蓄えたような様子で、本能からの恐怖を煽る声音を紡ぎ出す。彼が味方であるて分かって居る筈なのに、それでも恐ろしい程の怒り。

「……やってくれたな、ペテン師がぁッ!」

「あなたの力は、嘘と真実を入れ替える……けれどあんたには、さっきの話が嘘か本当かなんて、確かめる手段は無いでしょう?この街に住む全住人の命……それが、この二択問題に於いてあなたが掛ける金額です」

 ニィ、と、狼牙の顔が笑みに歪む。
 朗らかな笑みでは無い、快活な笑みでも無い。その笑みは如何なる犠牲をも厭わない、残虐な化け物の笑み。彼の真意に気付いた絵里の心も、この少年の皮を被った悪魔が如何に狡猾なのか、嫌という程理解した。


「あなた以外の無辜の人々――その生と死はあなたが決めるんだ。制限時間は貴方の力の限界である30秒。……その力で英雄になるか、災厄となるか……とても楽しみですよ、化け物」


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