第4話「策略」
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』という目的。その真意は――
「僕達の目的は、『全ての人間の、真の意味での平等』です。僕達マフィアはその為なら、何だってしてきました。これからだって、その決意に変わりはない」
「――っ」
なにを、勘違いをしていたんだろう。
根っからの悪なんてかけらも感じられなかったのも頷ける、彼らの願いは、彼らを襲った不幸から来る平和への願望。そこにただ他者を蹴落とす為だけの悪意など、感じられよう筈もない。当然の摂理だ。
彼らのそんな願いを、私は『悪』と断じていたのか。詳しい事情を知りもせず、ただ自分の中の基準にのみ従って。
なんて、馬鹿だ。
「……お願いします。どうか、助けて下さい。僕たちを……この先未来に生まれるだろう、不幸を運命付けられた子供達を」
「わた、し……は……」
膝をつき、両の手の平で顔を覆う。とても、酷いことをしたと、罪悪感が湧き上がって来る。いや、まだ、今からでも遅くは無いのだろうか。
私の力を使えば、彼らを助けられ――
「――そうやってまた、無垢な人間を騙すのか。詐欺師」
そんな、声が聞こえて。
「……江西、達也」
狼牙が僅かに目を細めて、現れた彼を見つめる。赤みがかった前髪から見える目つきの悪い視線が狼牙を睨み付け、僅かな怒気を孕んだ声音で彼へと言葉を投げる。、
「真っ赤な嘘でっち上げやがって。何が行き場を無くした者達の集まりだ、お前達、大概はその『居場所』を自分でブチ壊した連中の集まりだろうが」
「自分で、壊した……?」
「……絵里さんには、話してなかったですね。そいつらマフィアの家族、親戚、友人関係……みんな死んでますよ。不幸な事故でも何でもなく……そいつら自身が殺したんです、ただ金を集める為だけに」
「ぇ……」
絵里が驚愕の目を狼牙に向けると、彼は先ほどまでの無垢な笑顔を引っ込め、酷く冷たい無表情のみを浮かべていた。
その顔は、知っている。あの時、あの路地裏で、嫌という程記憶に刻み込まれた、恐怖の象徴。あの『カミサキ』と、全く同じ表情だ。ゾッとする程の悪寒が全身を包み込む。違う、先ほどまでの彼とは、明らかに違いすぎる。
「……あーあ、惜しかったな。あとちょっとで上手く丸め込めたのに」
「――っ!」
嘘だったのか。
あの悲痛な表情で語っていた、あの時の彼は。
あの快活な笑顔で私と話をしていた、あの時の彼は。
すべて、私を油断させるための罠……?
思い出す。先程の自分の考えを。彼の言うことをなんの根拠も無しに信じ、ただ自分の不義理を呪い、簡単に彼らに協力しようという思いを植え付けられていた。達也がこの場に割って入らなければ、確実にそのまま彼らに付いて行っていた事だ
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