出立のリターン
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ている……イメージ的には戦場で戦闘機に乗りながら歌うボーカリストみたいな音楽だった。
シャロンの好みは子守歌やバラードといった心が落ち着く音楽やけど、別にそれ以外の音楽をやらんわけやない。時にはこういった男の子が好きそうな激しい曲も歌ってくれる。見れば太陽樹の苗木も、どこか活き活きしているように感じた。そしてそれは……うちも同じやった。
自分では吹っ切れたつもりやったが、本当は両親のことが心に影を落としていた。乗り越えたと思い込んでいただけで、実の所は見ないように目を背けていただけやったんや。……心は、時に嘘をつく。自分にすら、偽りの姿を見せる。そしていつしか、偽りの自分が知らない内に自分自身を蝕み、全てを変えてしまう。演じているつもりが、自分自身になってしまう。白い紙に墨汁を垂らしたら、自然と真っ黒になっているように……。
あのまま放置しとったら、本当の自分が見えないところで悲鳴をあげるところやった。気付けたのはシャロンのおかげやね。とにかく……もっと、自分の心と向き合おう。喜びも、怒りも、哀しみも、楽しさも、そして……人を好きになった気持ちも、過去現在未来全ての時間で自分の心を素直に出せるようにならんとな。……お?
「……これは……スイッチでも入ったんか?」
「ザジさま、急に胸を押さえてどうしましたか? 何か体調でも崩しましたか?」
「そうやない。……見つけた、感じたんや。うちの……うちの中にあった力、アニマの器に」
「え、そうなんですか!? でも、どうして急に……そもそも記憶はどうなんですか?」
「記憶の方はまだ全部思い出せたわけやないけど、少しは取り戻せたから後は時間をかければ芋づる式に思い出せるはずや。急にアニマの器が使えるようになったのは、あのば……師匠が言ってた、存在を感じ取れば一発っちゅうことの意味やろ。要するに、記憶より先に感覚を取り戻したってわけや」
「結果的にはなりますが、それは良かったです。では早速本題に入りますが、次元世界へ行く方法はわかりますか?」
「任せとき、仕組み自体は転移魔法の応用みたいなもんや。転移を使い慣れていれば、行き来はそう難しいもんやないで」
そう宣言したうちは魔力を充填、転移の魔法陣を展開する。そして……エナジーを媒介にアニマの器の力を注ぎ、魔法陣に特殊な効果……並行世界を超える力を与えた。
アニマの器とはどんな色にも変わる力、といったもので、魔力に注げば魔力として、エナジーに注げばエナジーとして使える。しかも性能を上げたり、特殊な効果を与えることもできる。言ってみれば、力に対する万能調味料みたいなもんや。まぁこれはうちの知る使い方ってだけで、もしかしたら他の使い方があるのかもしれへんが、今は別にええやろ。
とりあえず使い方次第では魔女の力
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