出立のリターン
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したのはうちの実……あ、何でもない。まぁどうせこの街自体が廃墟なんやし、建物が一つ崩れたとしても怒られるようなことにはならへんやろ」
「そういう問題なのかな……」
機能しているかどうかは不明だが、財産権とか所有権とか諸々が気になるというシャロンに、うちは別の話題を差し向けることでごまかすことにした。
「ところでリタはどこにおるんや?」
「あの中だよ」
シャロンが端的に言ったその言葉と一緒に出した指さしにつられて、うちもその方向を見ると、ここから少し上の太陽樹の幹に、人が何とか入れるぐらい大きなうろが出来ていた。どうやらシャロン曰く、リタはあの中に入っていったようや。
「前にジャンゴさんが“古の大樹”っていう古代の太陽樹の中に出来たダンジョンに挑んだことがあると聞いたけど」
「ああ、死の翼フレスベルグがいたイモータルダンジョンやね」
「もしかしたら、ここも似た感じになってるかもね。もう少ししたら様子を見に行ったリタも戻ってくるはず……」
すると彼女の言葉通り、うろから手に植木鉢を持ったリタが出てきて、うちらのおる所まで慎重に降りてきた。
「ただいま戻りました」
「おかえり、リタ。それで中はどうだった?」
「ダンジョンの可能性も想定していましたが、少々広い空間が一つあるだけでした。ただ、その空間の中心に太陽樹さまの苗木が生き残っていらっしゃったので、僭越ながらわたしが回収させていただきました」
「苗木って、この植木鉢にあるのがそれ?」
大地の巫女としてなのか、リタは太陽の果実や植物などの種や、それを育てられる植木鉢を常に携帯しとる。その植木鉢の一つに、数枚の葉が生えた小さな木が植えられていた。なんかサン・ミゲルの太陽樹が芽生えた頃の姿を思い出した。
「アースガルズが吸血変異に襲われて結界が破られた際、太陽樹さまはせめてこの苗木を残すために多大な生命力を注いだようです」
「結界が破れてしまって、もう守れないからせめてこれだけでも……ということ?」
「要するに次の世代に託したっちゅうわけか。そんならちゃんと育つまで、うちらが守ってやらんとな」
「はい。植える場所が決まるまではこの植木鉢で、わたしがお世話させていただきます」
太陽樹の苗を手に入れた!
リタが大事そうに苗木を太陽に当てている所を見て、シャロンは「植物にも歌を聞かせたら元気になるって、前に本で見たことがあるなぁ」と呟いた。
「ちょっと意味合いが違うかもしれないけど、それならこの歌を聞かせたら喜んでくれるかな」
そう言ってシャロンは胸に手を当て、新しく覚えた新曲―――アクシア・イーグレットを歌い出した。その曲は徐々にアップテンポになって躍動感が高まり、気付けば心の底から元気が出
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