出立のリターン
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、残ってたのは表紙だけで中は風化して読めなくなっとった。ちょいと残念や。
「懐かしいなぁ……でも、おとーさんもおかーさんも、なんで処分せえへんかったのかな。うちが嫌いなら、うちの私物をこんな風に残しとく意味なんてないはずやのに……」
今更うちを捨てたことの文句を言いたい、といった気持ちはもう湧かないけど、せめてあの時、もう少し歩み寄れていれば……ちゃんと話し合って、少しでも両親の気持ちを知ることが出来ていれば……なんて後悔は湧いてくる。
あの時の両親は精神的な余裕がほとんど無くなっていた……うちもやけど、両親も限界やったんや。両親に責任を押し付けることは……うちには出来へん。
「せやから……お別れや」
リビングにいた2体のグール……なぜかうちを見ても襲ってこない所から、直感的にうちはそのアンデッドが両親の成れの果てやと気づいた。魔法で倒してもええんやけど、それよりちゃんと太陽の光で浄化してやった方が、肉体的にも精神的にも両親のためだと思った。
「リグ・ボルト!」
杖の先端から雷の魔法を天井に放ち、貫通……穴が開いてリビングに太陽の光が注がれる。黒煙を上げて浄化されていく両親のアンデッド……。うちはその光景を沈痛な気持ちで見つめていたが、完全に浄化される直前に、両親のアンデッドは頭を下げた気がした。まるで、娘に酷いことをしたのを謝るかのように……。
「今になって謝られても、どうしたらええのかわからへんよ……おとーさん、おかーさん。結局……仲直りできないまま、最期はこんな風になってもうたけど……これだけは言わせて。うちを生んでくれてありがと。……ま、あんなことがあった後やし、魔女にお礼言われるのは嫌かもしれへんな。だからあっちに行っても、うちのことは……もう何も心配いらんで……」
頬に一筋の滴が流れるのも気付かず、うちは空に昇って消えていく両親の灰を見送った。
「……あ」
枯れた太陽樹の傍でしゃがんでいたシャロンが、やって来たうちを見て声をかけようとしたが、すぐ口を閉ざした。その反応をされた辺り、どうやら雰囲気的に色々察せられたらしい。
そういう勘は鋭いんやよなぁ、シャロンは。月下美人とかそういうの関係なしに、人の機微を見とる。なんちゅうか……臆病やからか? なんにせよ、あまり気ぃ遣わせ過ぎるのも悪いし、一応吹っ切れたつもりやからその辺フォローしとくか。
「あんまし気にせんでええよ。放置しとった問題を一つ片づけてきただけや」
「そうなの? さっき、ここからリグ・ボルトの光が見えたけど、本当に大丈夫だった?」
「大丈夫大丈夫、ちょいと家の屋根壊しただけやで」
「つまり、これから毎日家を焼こうぜ的なことをしたと?」
「放火まではしとらんわ! それに壊
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