出立のリターン
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心を休ませるために、辛い気持ちを吐き出したくて…………そして…………」
―――アイツと初めて出会った。
文字に軽く手を当てながら、ザジはしんみりと呟いた。どうやら早速記憶が一部蘇ったようだが、その内容は良い記憶も悪い記憶も入り混じっていて、心中複雑になっているらしい。
「ザジさん……」
「……ごめん、少し行きたい所が出来た。二人は太陽樹の近くで待っていてくれへんか?」
「……わかりました。わたしもあの太陽樹さまの様子が気になりますので、あちらの方でお待ちしていますね」
ザジの気持ちを察したリタがそれを承諾し、私も無言でリタについて行った。今ザジを一人にするのは気が引けるが、それでも一人になりたい時はある。誰かが傍にいると、落ち着いて考えられないこともあるからね……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
シャロンとリタが枯れた太陽樹の所に向かったのを見届けた後、うちは服の袖をまくって改めて右ひじを見た。そこに残っていたのは両親に付けられた傷、うちが捨てられた証、泣いてばかりで何もしなかったうちに与えられた罰……。
「……あいつらと同じように、うちも向き合う時が来たんやな」
袖を戻して杖をギュッと握り締めたうちは、とある場所へ歩き出した。さっき取り戻したのは、この街で魔女として迫害されていた記憶と、アイツとの初めての邂逅、そして旅立ちの思い出。この街も神秘の森も無くなってしまったけど、思い出はちゃんと残っていた。
街を歩いてきたうちは、とある一軒家……うちの実家の前で立ち止まった。扉の取っ手に手をかけた途端、開けるのに思わず躊躇してしまったが……アイツにもらったこの杖と思い出から、なけなしの勇気をもらった。今までそのことを忘れてたのにアイツは……ずっと力を貸してくれてた、傍で支えてくれとった。いなくなった今でも……まだ……。
そして……ギィ〜っと音を立てながら扉を開けたうちは、追い出されてから初めて実家へ帰った。
「ただいま……」
当然ながら返事なんて帰ってこないが、それでも言いたかった。手入れされていないことで家中ホコリだらけで、風化もしていた。せやけど、やっぱり実家には実家の安心感というものがあった。例えそれが、辛い思い出ばかりだったとしても。
かつてうちの部屋だった空間に入ると、そこは追い出された時と物の配置が全く変わってない状態で放置されていた。本も、小物も、ベッドも、ぬいぐるみも、何もかもがそのまま……。
「そういや昔のうちは、標準語を使とったんやったな。今ではすっかり師匠の口調が移ってもうて、完全に戻しようがあらへんわ」
なんてことを呟きながら適当に机を物色してたら、小さい頃の日記が出てきて、思わず苦笑する。読めるかなぁと思ったものの
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