54部分:第六話 霧の中でその一
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こはあえて指揮官である武蔵に声をかける。そのうえで彼の考えを聞くつもりだったのだ。
「貴方はどう考えますか」
「それでよいかと」
武蔵は静かに頭を少し下げて彼女の言葉に答えた。その際目は閉じていた。
「壬生の傷もまだ完治していませんし」
「攻介、傷の方は大丈夫ですか」
「間も無くです」
壬生は姉に対して一礼したうえで答えた。
「申し訳ありません」
「よい。名誉の負傷です」
そう言って壬生を労わる。
「傷が癒えた時で」
「有り難き御言葉」
「では雷電、闇鬼」
「はっ」
二人はあらためて夜叉姫に声をかけられそれに応える。
「今回のシンクロナイズドスイミングは頼みましたよ」
「わかりました」
こうして二人の出陣が決まった。雷電は部屋に出ると早速その手に持っている鎖に雷を宿らせた。その光で顔を青白く照らしながら残忍な笑みを浮かべる。
「この雷で風魔の奴等を皆殺しにしてやる」
「闘志を燃え上がらせるのはいいが」
闇鬼はその雷電に対して言う。
「冷静さを忘れるな」
「ふん、ここで功績をあげ姫様にこの雷電の強さを知らしめる」
彼は今それだけを考えていた。
「武蔵に大きな顔をさせておいてたまるものか」
「武蔵か」
「闇鬼、そうではないのか」
怒った目を闇鬼に向けて問う。
「御前も。余所者である武蔵に好き勝手させていいのか」
「確かに不快だ」
闇鬼もそれは認める。相変わらず目を閉じたまま雷電の言葉に頷く。
「だが。姫様が決められたことだ」
「それはわかっている。だがそれでもだ」
雷電の血気は収まらない。
「壬生も壬生だ。負傷したのはともかく武蔵を認めるなどと」
「壬生には壬生の考えがある」
こう言って壬生を庇う。
「あまり熱くなってはかえってそれを風魔に付け込まれるぞ」
「風魔が何だというのだ」
しかし雷電の心は収まらない。それどころか熱くなる一方だ。
「この雷電の雷で一人残らず黒焦げにしてやる!」
「だから落ち着けというのだ」
「おやおや」
そんな雷電と制止する闇鬼を階段の上から見ている者がいた。陽炎だ。彼は二人を見下ろし右手で扇を扇がせながら笑っていた。
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