巻ノ八十七 佐々木小次郎その四
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「ふむ、やはりな」
「この程度のことはされるか」
「これはわし並の武芸者」
「よいものを見せてもらった」
笑みを浮かべて言うのだった。
そして幸村は自分達が倒したならず者達にあらためて声をかけ武器を放させたうえでお互いの話を聞いた、そのうえでだった。
話を無事に収めた、そのことにならず者達も驚いて言った。
「何と、そうすれば確かに」
「争う理由はありませぬな」
「お互いに半々に分ける」
「そうすればいいですな」
「左様、偶数の日の賭場はそちらが使い」
右側にいるならず者達に告げた、そして左側にいるならず者達にも告げた。
「奇数の日はそちらが使う」
「どちらか一方ではなく」
「両方が使えばですな」
「問題はない」
「しっかりと決めてですな」
「賭場の寺の僧侶には拙者からも話しておこう」
その開く場所の話もするのだった。
「その様にな」
「そこまでして頂けますか」
「何から何まで」
「いや、有り難い」
「しかも誰も怪我をしておりませぬ」
「ただ急所を打っただけで」
「こうしたことで怪我をさせぬ」
ましてや命を奪うこともだ、幸村は笑みを浮かべ答えた。
「戦の場でもないとな」
「左様ですか」
「だからですか」
「そうされたのですか」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「最初からそのつもりはなかった」
「いや、完敗です」
「そこまでの方とは」
「いや、我等の相手ではありませんでした」
「何とお見事か」
「これからはつまらぬ喧嘩なぞせず」
幸村は彼等にこうも言った。
「話を第一としてな」
「ことを収める」
「それがよいのですな」
「無闇に刃物なぞ出さず」
「そうしていけば」
「心を常に安らかにもしてな」
そのうえでというのだ。
「そうしてくのじゃ、わかったな」
「わかり申した」
「我等も感服しました」
「これからは賭場もそうしていきます」
「話を第一として」
ならず者達は幸村に誓った、そうしてだった。
幸村は根津を連れて道場の者達の方に戻った、するとまずは主が感服した顔と声でこう幸村に言ったのだった。
「お見事です」
「そう言って頂けますか」
「まことに。まさかあの様に収められるとは」
こう幸村に言うのだった。
「しかも僅かお二人で」
「拙者ならば」
宮本も唸って言った。
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